AWS、自動走行車「DeepRacer」を国内初披露--DNPがAI人材育成に活用中

大場みのり (編集部)

2019-05-27 10:44

 アマゾン ウェブ サービス(AWS)ジャパンは5月23日、18分の1スケールの自動走行型レーシングカー「AWS DeepRacer (DeepRacer)」を国内初披露した。併せて、同サービスを活用している大日本印刷(DNP)が自社の取り組みについて説明した。

 DeepRacerの自動走行を可能にしているのは、機械学習の一つである「強化学習」。機械が理想的な行動を取った際、高い報酬関数を与えることにより学習させる方法だ。例えば、車の位置がセンターラインから10%の範囲内であれば1.0ポイント、25%の場合は0.5ポイントを与える。センターラインとの位置関係は、付属のカメラで撮影された画像で分かるという。

AWSの瀧澤氏
AWSの瀧澤氏

 「AWSは、20年間にわたり機械学習に投資してきた。そして今回、強化学習を全ての開発者に届けたいと思い、このサービスを開発した」とAWSジャパンの技術統括本部レディネス&テックソリューション本部本部長/プリンシパルソリューションアーキテクトを務める瀧澤与一氏は説明した。

 AWSは、自動運転のレースリーグ「AWS DeepRacer リーグ」も展開している。コンピューター空間の中にある「バーチャルサーキット」と実機が走る「Summit サーキット」の2つがあり、同社はバーチャルで練習を積んだ上で、実世界のサーキットに挑戦することを推奨している。

 瀧澤氏は「実世界ならではのノイズがあるため、最初のうちはバーチャルサーキットのように走らないかもしれない。だが、バーチャルで練習を積み、両世界のギャップを埋めながら練習することによって、上達するはずだ」と話していた。

 学習コンテンツは無料で、6つの自己学習パート(各90分間)で構成されている。AWSアカウントを持っていれば、AWSマネージメントコンソールからDeepRacerを選び、開発を始められる。国内での実機発売日は未定だが、6月12~14日に幕張メッセで開催される「AWS Summit Tokyo 2019」で走行を予定している。価格に関しては、米国Amazon.comで予約した場合、399ドルだという。

DNPの福田氏
DNPの福田氏

 続いて、DNP情報イノベーション事業部C&Iセンター副センター長の福田祐一郎氏が登壇した。DNPは、DeepRacerをAI人材の育成に活用している。福田氏は「AIは、コミュニケーションやヘルスケアなど、われわれの成長領域に必要不可欠な存在。そのため今後、より多くの技術者を育てる必要がある。そこで、楽しみながら強化学習を学べるDeepRacerの活用に踏み切った」と語った。

 同社では週2回、業務時間内にDeepRacerの勉強会を開催し、各社員が培ったノウハウを共有している。2019年3月からは、月1回のペースで社内レースも実施。グループ会社を含めた73人が参加している。この取り組みでは、強化学習のノウハウを底上げするとともに、エンジニアに必要とされるオーナーシップやフィードバック精神を向上させることを目指しているという。

 実機が発売され次第、購入してSummit サーキットにも参加する予定だ。現在は、社員がレースのコースを体感するため紙でコースを作成したり、レース自体を盛り上げようと距離のセンサーや電光掲示板を作ったりしている。加えて、福田氏は「実際のコースも同社のスペースデザイン部門に依頼し、本日(5月23日)の午前中に完成した。実機が発売されたら、これを使って社内でレースを開催したい」と述べた。

 同社は、バーチャルサーキットには参加済み。4月にシンガポールで実施された大会に2人が参加し、12位と17位という成績を収めた。この結果に満足することなく、優勝に向けて今後も練習を積んでいくという。福田氏は「現在、グループ全体でIT人材が2000人、AIの知識を持っている社員が200人弱いる。どちらも5年以内に倍の人数にしたい」と語った。

DeepRacerの実機。なめらかなフォルムが印象的

DeepRacerの実機。なめらかなフォルムが印象的

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