米国を拠点とするビジネスインテリジェンス(BI)ベンダーのDomoは5月21日、日本市場での事業戦略とBIツール「Domoプラットフォーム」の最新機能、エイベックスでの導入事例を発表した。Domoプラットフォームは、「接続」「保存」「準備」「可視化」「コラボレーション」「予測」「拡張」という7つの機能で構成されており、データの活用をトータルで支援する。顧客企業は約1700社、業界は小売り、メディア・エンターテイメント、製造、金融など多岐にわたる。
Domoのハラピン氏
最初に登壇したDomoアジアパシフィック・日本地域担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのポール・ハラピン氏は「多くの企業は、自社のデータが複数のデータベースに散在していることや、複数のベンダーが提供するサービスを導入していることから、データの統合に何年もかけている。その結果、ソリューションが導かれる頃には、元のデータが古くなってしまっている。これを受けてわれわれはDomoプラットフォームを開発した」と話す。
「これまで企業はいわば、いろんな企業から車の部品を買って自社で組み立てるようなことをしていた。さらに、その車は走るのに時間がかかる。一方われわれは、すぐに走れる車を提供する。それにより、データは真価を発揮することができる」とハラピン氏は語った。
ドーモの福﨑氏
続いて、Domoの日本法人であるドーモのコーポレート・ストラテジー・ディレクター兼プリセールスソリューションズ・ディレクターを務める福﨑一郎氏が、以下の4つを軸に日本市場の顧客企業を支援していくと述べた。
1. CIOへのアプローチ強化と「Integration Cloud」の本格展開
- Domo Integration Cloudは、Domoが持つバックエンドでのデータ統合と管理機能に新しいツールが加わったiPaaS(integration Platform-as-a-Service)。600以上のプラグ&プレイクラウドコネクターにより、クラウド・オンプレミス・ハイブリッドで、安全な統合、双方向のデータ交換やライブキャッシュ、データ変革を実現する
2. データサイエンス、機械学習(ML)/人工知能(AI)機能の強化
- ML機能の「Did You Know」は、データを常にスキャンして自動的に学習。トレンド、関連性、変則性、相関の検知に用いられるデータ分類を作成できる
- データサイエンティストは、MLサービス「Amazon SageMaker」を利用可能。またコラボレーションツール「Jupyter」との統合により、データ分析ツール「Jupyter Notebook」に蓄積されたDomoデータセットを利用できる
- 「Domo Business Automation Engine」は、組織内のデータ、システム、人を対象としたオーケストレーション層。機械学習と高度なアラート機能により、組織におけるイベントベースのワークフロー連携や、インサイトの取得からアクションまでの時間を短縮する
3. セキュリティーやガバナンス機能などの機能拡張
- IDに基づくデータ権限の管理機能により、セキュリティーポリシーの維持や業務管理を軽減する。「Domo Stories」はユーザーの理解促進に向け、重要なデータが記載されているカードを大きく表示するなど、メリハリのあるレイアウトのダッシュボードを作成
4. ソリューションとアプリケーションの強化
- 「Domo IoT Cloud」は「AWS IoT Analytics」「Azure IoT Hub」といったデータソースに対応。現在のIoTデータと業務データを組み合わせながら、第三者のデータソースを重ねることで全体像を把握できる。 IoTデータ用のアプリ「Device Fleet ManagementApp」と「Production FlowApp」が含まれている
- 「Domo Marketing Suite」は、指標、消化予算、キャンペーン素材、チャネルを集約し、キャンペーン結果を向上させるアクションの推進も支援する。その結果、マーケティング部門が想定ではなく、パフォーマンスに基づいた意思決定が実現すると見込まれる。新しく発売されたアプリ「Digital 360」と「Campaigns」が含まれている
エイベックスの山田氏
最後に、エイベックスの新規事業推進本部デジタルクリエイティヴグループゼネラルマネージャーを務める山田真一氏が登壇した。「社内にはさまざまなデータが存在していたが、多角的な分析や事業や部署を超えたデータの共有はできていなかった。そのため、2013年4月にアナリティクスチームが設立された」と同氏は説明。アナリティクスチームでは、複数のBIツールを同時に検証した結果、豊富なコネクター数や美しいビジュアルなどからDomo プラットフォームの導入に至ったとしている。
導入初期、アナリティクスチームが取り組んだのは、部署ごとの理解促進だ。「これを全社で使いなさい」とトップダウンで導入を促しても実際には浸透しないことが予想されたからだ。
そこでアナリティクスチームは当初、BIツールの導入と平行して整備を進めていたデータ基盤を使って事業データの可視化を試みた。そして、その結果を各部署に持ち込み説得したところ、現場の社員たちは「有効なのは分かるが、サンプルのデータだけでは活用イメージが湧かない」という感想を持ったという。
これを受けてアナリティクスチームは、各部署に対して直接提案するのではなく、現場のキーパーソンを巻き込んでDomo プラットフォームのファンになってもらうことで所属部署内での活用を促してもらった。
では、どのような社員をキーパーソンとしたのだろうか。それは「課題感を持っている社員」だと山田氏は語る。「決定権はないものの、意欲がある人はどの部署にもいる。社員たちとコミュニケーションを取る中で、そういった人物を見つけ出し、彼らを説得した」同氏は述べた。
各部署内で提案が了承された後は、アナリティクスチームがサポートしつつも、各部門内でBIツールの活用を推進。アナリティクスチームではなくキーパーソンの成果としていくことで、部内で「自走できる体制」(山田氏)を構築した。それにより、利用が一気に拡大したという。現在は、マーケティングのほか、制作やマネジメントの部署でも活用されているという。
今後について山田氏は「未導入の部署や事業への導入、作成済みダッシュボードの改善・パフォーマンスのチューニング、拡充された機械学習系機能の活用を考えていると述べた。部署や事業の横展開と深掘りにより、引き続きデータを事業に活用していきたい」と述べた。