航空業界では常時利用可能であることとリアルタイム情報へのアクセスが極めて重要であり、ITシステムに障害が発生すると航空会社が大きな影響を受けることがある。最近では、DeltaやSouthwest、Unitedなどの航空会社が、ITシステムの障害が原因でフライトのキャンセルや遅延が発生し、多額の金銭的な損失が起きたと認めている。米国政府が新たに発表したレポートは、航空業界でITシステムの障害がどれだけ大きな問題になり得るかを理解できるものになっている。
中立的な組織である米国の会計検査院(GAO)が発表したこのレポートによれば、2015年から2017年にかけて、航空会社に悪影響を及ぼすITシステムの障害が少なくとも34件発生している。影響を受けた航空会社は、GAOが調査した12社のうち11社に及んでいた。調査の対象となった航空会社は、Alaska、American、Delta、United、Frontier、JetBlue、Spirit、Southwest、Virgin America、ExpressJet、SkyWest、Hawaiianだ。
このレポートでは、乗客に影響が及ぼす可能性のあるITシステムに焦点を当てており、これには例えば、予約やチェックイン関連のシステムや、航空会社がフライトプランの立案や機材の手配に使用するシステムなどが当てはまる。一方、航空機の飛行に使用される電子機器(航法システムなど)や、フライト中の業務のためのシステム(乗客用のWi-Fiネットワークなど)、社内の業務システム(航空会社の電子メールシステムなど)は対象としていない。
法律上は、たとえITシステムが原因でフライトに問題が起こっても、航空会社にITシステム障害に関する情報を公表する義務はない。このため、実際に発生した被害を完全に評価することは難しい。それでも、今回のGAOの調査では、明らかになった障害の約85%がフライトの遅延やキャンセルの原因になっていたことが判明した。少なくとも5件の障害では、800件以上の遅延とキャンセルが発生した。また少なくとも14件の障害では、空港の閉鎖が発生した。これは、特定の空港に向かうすべてのフライトが欠航したか遅延したことを意味している。これらの空港閉鎖のいくつかは数時間続いたという。
さらに少なくとも7件の障害では、フライトには乱れが生じなかったものの、ほかの形で顧客に不都合が生じた。例えば顧客は、オンラインでのチケット購入や航空会社のウェブサイトでのフライトのチェックインを行う際に問題を経験した。
レポートには、「ある航空会社の担当者は、航空会社のITシステム障害が業務に及ぼす影響は悪天候に匹敵するが、システム障害の方が頻度はずっと少ないと述べた」と記述されている。
頻度が少ない一方で、ITシステム障害の発生は予測が難しい。
「前述の担当者によれば、それに対して悪天候による混乱は前もって予測可能であり、航空会社は予想された混乱に備えることができる。これには顧客への対応や、フライトクルーとスケジュールの調整、航空機の事前の配備などが含まれる」(同レポート)