米航空業界のITシステムは、レガシーシステムと単一障害点という問題にむしばまれている。なぜこのような状況になったのだろうか?企業合併や、経営破綻後のリストラ、クラウドへの対応の遅れなど、理由はさまざまだ。
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Delta Air Linesのアトランタ本社で米国時間8月8日に停電が起こり、システムがダウンした結果、多くの便が欠航し、多数の乗客に影響が及んだ。また、Southwest Airlinesのシステムが7月、ルータの故障によってクラッシュし、およそ2300便に影響が及んだ。さらにUnited Airlinesも2015年の6月にオートメーションの問題により、また同年7月にルータの故障により、一時的に運航を停止した。航空業界はレガシーシステムの寄せ集めから脱却し、クラウドコンピューティングの道へと早急に進む必要がある。
ITシステムの障害を一切なくすのは不可能だ。そして今や、テクノロジは業務と切り離せなくなっており、システム障害は多くの人々に影響を与えるとともに、企業の評判に傷を付ける。ここで、航空会社は2016年にもなって、なぜ単一障害点を抱えているのかという大きな疑問が頭をもたげてくる。クラウドサービスによって、基幹システムを稼働させ続けるだけの復元性能やバックアップの選択肢、冗長性が実現できるにもかかわらずだ。
そのようななかでも航空会社は(今や巨体化し、大きな利益を得ているものの)、資金力が無く、利益よりも倒産の心配の方が大きかった時代に作られた寄せ集めのシステムを運用し続けている。American Airlinesは経営破綻後のリストラを乗り越え、US Airwaysとの合併を果たした企業だ。またDelta Air LinesとNorthwest Airlinesも経営破綻後の再建で合併した企業だ。そして経営破綻後に再建を果たしたUnited Airlinesは、Continental Airlinesと合併したが、いまだに統合による問題を完全に解決できていない。
業務的な観点から見た場合、航空業界におけるIT問題の状況は十分に理解できる。要するに、(Southwest Airlines以外の)企業はシステムに投資するだけの資金力がなかったのだ。その日を生き伸びようとしている時に、次世代のテクノロジに投資することなどできないというわけだ。
その結果、現代の航空会社は一部で1990年代のソフトウェアを使い続けている。基幹システムはどんなに新しくても10年以上前に開発されたものだ。「iPad」を使った事例はそこかしこで見られるが、企業の評判を左右するのはバックエンドのシステムなのだ。バックエンドのシステムで障害が発生すると、フロントエンドのシステムと顧客サービスはあっという間に停止する。理にかなうのは数年だったIT業務上の意思決定のつけを払わされているのは旅行客だ。
心配なのはDelta Air LinesがIT分野に対する積極的な姿勢で知られていた企業だという点だ。American Airlinesはシステム統合をうまくやってのけたが、IT関連のとある障害が将棋倒しのように世界の運輸に影響を与えるという問題は、航空業界全体が考えるべきだ。