システム障害でフライトが遅延--航空会社のシステム障害に関するレポートで分かったこと - (page 2)

Stephanie Condon (ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-06-21 06:30

 レポートで特定された航空会社のITシステム障害の原因は、ハードウェアの故障や、ソフトウェアの障害や処理速度の低下、停電や通信の途絶、ネットワーク接続の問題など多岐に渡っている。7件の事例では、あるITシステムの問題が、連鎖的にほかのシステムにも影響を及ぼしていた。例えば、大量のオンライントラフィックによってある航空会社のウェブサイトがダウンし、それに伴って同航空会社の予約システムとチェックインシステムにも障害が発生したケースもあった。これらの問題の要因して、レポートでは、ITシステムに対する長期間にわたる投資不足、古いレガシーシステム、環境の複雑化といった、ITの専門家にはなじみ深い項目が挙げられている。

 レポートでは、空港がこうしたITシステムの課題に対して取っている対応として、さまざまなものを挙げている。例えば5社の航空会社は、ITの運用を単一のデータセンター以外にも拡大するか、クラウドに移行することで脆弱性を減らそうとしている。また2社は、複数の通信事業者を使用することで接続性を確保する取り組みを進めていた。さらに、各航空会社はさまざまな危機管理計画や復旧戦略を策定しており、これには定期的なシステムのテストや障害の発生に備えた訓練などが含まれている。

 GAOは、ITシステム障害が発生した場合に、航空会社が乗客に対して契約上どのような責務を負うかを調べるため、各航空会社の運送契約についても調査した。ITシステム障害について直接取り扱っている契約は1つもなかったが、障害によってフライトに乱れが発生した場合、キャンセルや遅延に関するより広汎な契約条項の対象になり得ることが分かった。それでも消費者団体はGAOに対して、航空会社が、ITシステム障害は航空会社の力が及ばない事象であり、運送契約の対象から除外される「不可抗力」であると主張する可能性があると懸念を表明している。

 調査対象とされたほぼすべての航空会社でITシステム障害が発生していた一方で、この問題に具体的に言及している消費者の苦情は非常に少なかった。米運輸省が2015年から2017年の間に受理した苦情のうち、米国内の航空会社のITシステム障害に明示的に言及していたのは126件だけだったが、同省は同じ期間に、毎年1万7000件~2万1000件の苦情を受理している。

 運輸省は大手航空会社に定時運行の達成状況を米運輸統計局に報告することを義務づけており、これにはフライトの遅延やキャンセルの発生原因も含まれる。ところが、運輸統計局が設定している原因の分類は5種類(航空会社が原因の問題、悪天候、航空宇宙システムが原因の問題、安全保障、航空機の到着遅延)しかなく、定義の幅が広すぎて、この統計からはITシステム障害が原因かどうかは判別できないことも分かった。GAOの調査によれば、「航空会社が原因の問題」にはさまざまなものが含まれる上に、IT関係の問題がほかのカテゴリーに分類される可能性もあるという。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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