日本IBMは6月21日、クラウド事業に関する報道機関向けのラウンドテーブルを開催した。米IBMのIBMクラウド・プラットフォーム担当ゼネラル・マネージャーのHarish Grama氏と、日本IBMの取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏が出席した。
また、同日には、IBM Cloudの西日本初となるネットワーク接続拠点(PoP:Point of Presence)を大阪に開設し、顧客企業の社内ネットワークとIBM Cloudのプライベートネットワーク間を閉域接続するサービス「IBM Cloud Direct Link」を提供すると発表した。大阪にデータセンターを開設する計画も明らかにしている。
IBM Cloudデータセンターの特徴について、Grama氏は、東京、ダラス、ワシントンDC、ロンドン、フランクフルト、シドニーの6リージョンでマルチアベイラビリティーゾーン(AZ)を構成している点を挙げる。また、リージョン内でのゾーン間通信は2ms以下の最小遅延とする設計になっているという。
米IBMのIBMクラウド・プラットフォーム担当ゼネラル・マネージャーのHarish Grama氏
これに付け加えて、三澤氏はデータセンターの所在地を公開していることも、競合他社との違いを生んでいるとする。実際、東京リージョンについては、豊洲・川崎・大宮の3カ所にデータセンターを設置していることを明らかにしている。「規制の強い業界などでは、本番環境とバックアップ環境をどこに置いているのか証明する必要がある」(同氏)ためという。
また、ゾーン間のネットワークについては、「競合他社よりはるかに贅沢なネットワーク」(三澤氏)で、それぞれのデータセンターを結んでいるとアピールする。
Grama氏は、顧客企業の関心はマルチクラウドにあると説明。複数のクラウド環境を使用している企業は94%、複数のパブリッククラウド事業者を使用している企業は67%など、同社の実施した調査結果を引用した。また、ハイブリッド&マルチクラウドに関する重要な懸念事項として、クラウド間の移行(73%)、クラウド間の接続性(82%)、管理の一貫性(67%)が挙がったとしている。
IBM Cloudでは、ハイブリッドクラウドを戦略に掲げている。System of Record(SoR)、System of Engagement(SoE)という特性の異なるシステムのクラウド化に対応するため、IBM Cloudのインフラ上でVMware環境を提供する「IBM Cloud for VMware」と、「Kubernetes」を中心とするコンテナー技術をベースにしたサービスの実装を進めている。
IBM Cloud for VMwareが市場から評価されている点に関しては、サーバー1台から構成可能なエントリーポイントの低さがある。競合他社と比べて、圧倒的に小さい構成でスタートでき、概念実証(PoC)レベルから始められるという。さらに、関東近郊に設置された3カ所のデータセンターでVMware環境が稼働しており、高可用性(HA)構成を柔軟に構築できる。「リージョン間、AZ感の通信が無料」(三澤氏)で使える点も大きな特徴となっている。
日本IBMの取締役専務執行役員 IBMクラウド事業本部長の三澤智光氏
Kubernetesについて、オープン標準をプラットフォームの中心に据えることで、ベンダーロックインを回避する。また、コンテナー基盤の運用に必要なロギング、監視、測定、永続ストレージ、セキュリティー、IDアクセス管理といったサービスを共通化。その上で、コンテナー化された企業向けアプリケーションを稼働する。
オンプレス向けには「IBM Cloud Paks」を提供。アプリケーション向けやデータ向け、インテグレーション向けなど、Kuberneteと共通部品の上に、それぞれ異なるコンポーネントをプリパッケージしたものを展開していく。
これにより、既存アプリケーションやワークロードのリフト&シフトから、新しいクラウドネイティブなアプリケーションの開発まで柔軟に対応する。その上で、三澤氏は「レガシーシステムとクラウドネイティブは別物の時代ではなくなってきている。両者をどのように連携するのか、レガシーシステムをどうモダナイズするのかが今後の課題となってくる」と指摘する。
特性の異なる2種類のアプリケーションのクラウド化に対応