松岡功の「今週の明言」

IBMとセールスフォースの関係を象徴した両日本法人トップの「対談」

松岡功

2019-07-05 10:13

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、日本IBMの山口明夫 代表取締役社長と、リコージャパンの坂主智弘 代表取締役 社長執行役員 CEOの発言を紹介する。

「お互いの強みを生かして日本企業のデジタル変革を後押ししていきたい」
(日本IBM 山口明夫 代表取締役社長)

日本IBMの山口明夫 代表取締役社長
日本IBMの山口明夫 代表取締役社長

 日本IBMが先頃、顧客向けの年次イベント「Think Summit」を都内で開催した。山口氏の冒頭の発言はその基調講演で、セールスフォース・ドットコムの小出伸一 代表取締役会長兼社長をゲストに迎えて語り合った際に、両社のパートナーシップを強調したものである。

 この基調講演全体の内容については、リポート記事「日本のデジタル変革は第2フェーズに移行している―日本IBMの山口社長」をご覧いただくとして、ここではその最後に、山口氏が「ビジネスパートナーとの協業にも一層注力していきたい」と述べ、小出氏をゲストに迎えて語り合ったシーンをピックアップしたい。

 こうした場での両者の「対談」が実現した背景には2つのポイントがある。1つは、両社の親会社である米IBMと米Salesforce.comがおよそ2年前から戦略的パートナーの関係にあることだ。その内容については筆者の「一言もの申す」連載記事「提携強化したIBMとセールスフォースの“特別な関係”」を参照いただきたい。

 もう1つは、小出氏が日本IBM出身で、山口氏の上司だったこともあるという両者の関係だ。小出氏は、「30年ほど前、日本IBMで一緒に仕事をしていた頃、私がメインフレームの提案書を書いている横で、山口さんはダンプリストの解析作業をしていたのを覚えている。そんな2人が今このステージに立っているとは……」と感慨深げだった。

 山口氏がデジタル変革支援事業に向けた今の日本IBMへの期待について聞くと、小出氏は次のように答えた。

 「お客さまのデジタル変革を支援するため、当社では業種業態を問わず、お客さまの顧客接点に対して最高のカスタマーエクスペリエンスを提供できるように尽力している。一方、IBMは長い歴史と伝統の中で業種ごとのナレッジを蓄積し、ミッションクリティカルなシステムをはじめ、高度なインテグレーション能力のもと、さまざまなニーズに対応した仕組みを提供してきた。その両社が今後さらに緊密に連携していけば、お客さまの期待を超えられるようなデジタル変革のお手伝いができるのではないかと思っている」

 さらに、こう続けた。

 「実は、IBMには全世界で当社のCRM(顧客情報管理)を使っていただいており、最大級のお客さまでもある。よくご存知いただいているからこそ、両社のパートナーシップならではのデジタル変革をお客さまにお届けできるのではないかと期待している」

 山口氏の冒頭の発言は、この小出氏の期待のコメントに応えたものである。端的に言えば「バックエンドのIBMとフロントエンドのセールスフォース」。補完関係が成り立つ両社の今後の活動に注目しておきたい。

セールスフォース・ドットコムの小出伸一 代表取締役会長兼社長(右)と山口氏
セールスフォース・ドットコムの小出伸一 代表取締役会長兼社長(右)と山口氏

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