NTTコミュニケーションズは10月25日、パブリックIaaSサービスの「Cloudn(クラウドエヌ)」を2020年12月末で終了すると発表した。企業向けプライベートクラウドサービス「Enterprise Cloud」とデータ活用支援サービス「Smart Data Platform」を強化していく。
クラウドエヌは、仮想サーバーやコンテンツ配信などの機能を個人と法人向けに提供しており、米国で2012年3月、国内では同年6月に開始された。現在のユーザー数は約5000件といい、既存の大規模ユーザーにはEnterprise Cloud、中~小規模ユーザーにはNTT PCコミュニケーションズの「WebARENA」への移行を呼びかける。今回の施策に伴ってクラウドエヌの新規利用受付を12月1日に終了し、サービス提供を2020年12月31日で終了する。
移行先として大規模ユーザーは「Enterprise Cloud」、中~小規模ユーザーはグループ会社のNTT PCコミュニケーションズが提供する「WebARENA」などになる
中~小規模ユーザーの移行先として提案するWebARENAでは、セキュリティのオプション機能がある月額定額制の「VPS SuitePRO V4」に加え、インターネット接続のみの従量課金メニュー「(仮称)VPSクラウド」を新設して、クラウドエヌからの移行に対応する予定。詳細は10月下旬に発表するとしているが、現在のクラウドエヌの最小利用価格よりも安価にするという。
大規模ユーザー向けでは、Enterprise CloudでOpenStackベースの同種のサービスを提供しており、こちらが主な移行先になるという。各ユーザーに対しては、全面的な移行支援に注力していくと説明している。
クラウドエヌは、前身となった主要なサービス機能の提供が2008~2009年に開始され、現在は「ハイパースケーラー」「メガクラウドベンダー」と呼ばれるAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureなどの提供開始時期に近い。
NTTコミュニケーションズでクラウド分野のエバンジェリストを務める林雅之氏
クラウドエヌの立ち上げを担当し、現在はクラウド分野のエバンジェリストを務める林雅之氏は、「当初のクラウドエヌは国産として海外勢への対抗を目指したが、需要がプライベートクラウドへ変わる中で『Enterprise Cloud』に注力していくこととなり、近年は目立ったマーケティングなども行っていなかった。『Enterprise Cloud』の技術や人材の多くはクラウドエヌが起源。われわれのクラウドビジネスの基礎になった」と総括した。
かつての「Cloudn(クラウドエヌ)」のプロモーション。当初は国内大手キャリアによるパブリックIaaSサービスとして期待が高かった
同社は今後、クラウドエヌで対象としたパブリッククラウドのIaaSはメガクラウドベンダーとの連携で対応していくが、Enterprise Cloudなどのプライベートクラウド市場は、国内大企業の基幹系業務システムのクラウド移行が本格化し、市場の規模や成長率がパブリッククラウドを大幅に上回ると予想する。「ITインフラの“リフト&シフト”(ITインフラのオンプレミスからクラウドへの移行とクラウドへの最適化)やデジタルトランスフォーメーションの基盤として利用拡大が期待される。Enterprise Cloudを軸としてSmart Data Platformによる企業でのデータの利用や活用を支援していく」(林氏)という。
Smart Data Platformは、データの収集、蓄積、活用のための機能をワンストップで提供するサービスとして9月に立ち上げたもの。データマネージメントやデータインテグレーション、匿名加工化などによるデータセキュリティ、オプジェクトストレージなどの新メニューを相次ぎ開始させて、今後はVMware関連やERP(統合基幹業務システム)向けの機能拡張、GPUインスタンスによるディープラーニング機能などの強化を予定している。
Smart Data Platformの主な機能メニュー