「顔を合わせなければコミュニケーションできない」は幻想

なかむらアサミ (サイボウズ チームワーク総研)

2019-10-21 07:00

交通機関が乱れても「通勤する」日本人

 通勤にこだわる企業が未だに存在する日本社会。先日の台風15号の際にも交通機関が乱れましたが、数時間かけて通勤された方も多かったように思います。マスメディアのニュースでは、駅で2時間缶詰になるなどの過酷な模様が伝えられ、想像するだけでうんざりしました。年々人混みが苦手になっている筆者は、おそらく体調不良となり、その日1日を棒に振ってしまうでしょう。

 ただ、たとえ人混みが苦でないとしても、相当ストレスフルな状況となってしまうのは同じではないでしょうか。

 ビジネスパーソンによる通勤行列の報道は、もはや台風の恒例行事になっているといっても過言ではありません。もちろん病院や各種サービス業など、「現場に行く」ことが重要な職種の方もいるでしょう。しかし、行列に並んでいる全員がそうではないはずです。公共交通機関の混雑は誰しもが避けたいはず。なぜこのようなことが毎度起こるのでしょうか。

中身に差が出たリモートワーク調査

 今年の7月、筆者が所属するサイボウズチームワーク総研は、リモートワークに関して調査しました。職場でのリモートワーク導入状況は、「常時全社員がリモートワークできる」企業が13%、「特定社員だけリモートワークできる」企業が43%。企業の4割が「リモートワーク可能」というのは、もしかしたら悪くない数値といえるかもしれません。

リモートワークの導入状況(出典:サイボウズ)
リモートワークの導入状況(出典:サイボウズ)

 しかし、その内訳を見ると愕然とした差がありました。在宅ワーク、サテライトオフィス、モバイルワークいずれのリモートワークにおいても、従業員規模が1000人以上の大手企業での導入が進んでいます。一方、100人以下の企業での導入率はいずれも1割程度かそれ以下。かつ「不要」の声は約6割という結果でした。

リモートワークの導入状況詳細および希望(出典:サイボウズ)
リモートワークの導入状況詳細および希望(出典:サイボウズ)

 総務省統計局による平成26年の「経済センサス」によれば、日本の企業構造は100人以下の企業が約9割で、労働者の7割を占めています。つまり9割の企業ではリモートワークの仕組みがなく、その半数以上は今後も含め「リモートワークは不要」と言っていることになります。確かにこれでは大多数のビジネスパーソンには「通勤」の選択肢しか無さそうです。

 平成29年版「情報通信白書」においても、「従業員数300人以下の企業でテレワークを既に導入している企業は3%、テレワーク導入可能群の企業が21.4%」とあります。サイボウズチームワーク総研の調査結果とほぼ同様といえそうです。

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