Amazon Web Services(AWS)は10月、「Rust」開発プロジェクトへの支援を発表した。セキュリティなどに力点を置いたこの言語には近年、同社以外の大手IT企業からも支持されている。
AWSによる支援は、Rustチームに「AWSプロモーション・クレジット」を提供するという形態をとる。Rustチームはこのクレジットを用いてAWSのインフラを利用して、同言語を開発していくというわけだ。
RustコアチームのメンバーであるAlex Crichton氏は、「Rustプロジェクトが長年使ってきているAWSによってRustのインフラが支援されるのは、非常に喜ばしいことだ」と述べている。
Crichton氏は「この支援によってRustは、コンパイルした成果物の配布や、crates.ioクレートのダウンロード、すべてのプロセスの結合に必要なプロジェクト内での自動化のために、AWS上でインフラをホストし続けられるようになる。これらのサービスは、『Amazon CloudFront』や『Amazon Elastic Compute Cloud』(Amazon EC2)、『Amazon Simple Storage Service』(Amazon S3)といった数々のAWS製品を利用している」とも述べている。
「また、Rustプロジェクトに対する支援の多様化は長期的な成功のために不可欠であるため、AWSがこの目標に直接貢献してくれる点についてわれわれは心を躍らせている」(Crichton氏)
AWSにおけるRust利用の急速な拡大
AWSによると、支援を決定したのは同社インフラ内でのRustの利用が増え始めたためだという。また現在では、「AWS Lambda」やAmazon EC2、Amazon S3といったサービスにおける「パフォーマンス要求の厳しいコンポーネント」でRustを使用しているという。
さらにAWSは2018年11月に、Rustで記述されている「Firecracker」という仮想化技術をオープンソースとして公開している。
RustがAmazonのバックエンドで稼働するコードの大きな部分を占めるようになってきているため、同社はRustプロジェクトが発展し、セキュリティ問題を解決するための手段を確実に手にし続けられるようにしようとしているわけだ。
Rustの採用が急増
プログラミング言語Rustは、2009年にMozillaのエンジニアリングチームによって作り上げられた。その後、同プロジェクトは別組織へとスピンオフしたが、その資金の大半はMozillaによって提供され続けている。
この言語は、C言語やC++言語で構築されたアプリケーションに潜むセキュリティ脆弱性の原因となることが多い、メモリー関連のバグを防ぐ目的などでゼロから構築された。
Rustとその機能は当初、あまり評価されていなかったが、現在ではその採用が急増しており、安全性を重視した設計という決断が正しかったことを証明するかたちとなっている。
「Firefox」や「Brave」といったブラウザーはRustのコンポーネントを利用しており、CloudflareやDropbox、Yelpといった企業やnpmも本番システムでRustを採用している。
Tor ProjectもRustを実験的に利用しており、Facebookが最近立ち上げた仮想通貨(暗号資産)プロジェクト「Libra」でもRustが活用されている。
中でも、Microsoftが同社のさまざまなサービスの内部で利用されているCやC++の代替として、Rustの活用を検討しようと計画していると発表したことは、特に注目を集めた。
Rustは大手企業だけでなく、開発者にも人気の高い言語だ。StackOverflowによる開発者調査で、ここ数年最も人気の高い言語となっており、その人気はさらに高まると予想されている。
AWSはRustだけではなく、他のオープンソースプロジェクトに対してもAWSプロモーション・クレジットというかたちでの支援を発表している。こうしたプロジェクトにはプログラミング言語「Julia」、「AdoptOpenJDK」、「Maven Central」リポジトリ、「Kubernetes」「Prometheus」「Envoy」が含まれている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。