Salesforceはデータ、コンテンツ、パーソナライゼーションを融合させて1カ所で集中的に管理し、複数のデバイスに提供できるコンテンツ管理システム(CMS)をリリースした。
Salesforceによると、この「Salesforce CMS」は、コンテンツの作成者がコンテンツのドラフトを作成し、外部のシステムやSalesforceの各システムに配信するとともに、Eコマースサイトやモバイルサイト、デスクトップ用サイトなどをはじめとするさまざまなサイト向けにも提供できるハイブリッドCMSだ。
「Community Cloud」「Commerce Cloud」およびSalesforce CMSの製品マーケティング担当バイスプレジデントであるAnna Rosenman氏によれば、このCMSはレガシーなコンテンツシステムの管理に関する顧客のフィードバックや不満を元に作られたという。Salesforceが目指しているのは、コンテンツとデータ、そして顧客を結びつけることだ。
「CMSを作ろうとしたというよりも、顧客が何をやりたがっているかを重視した。企業が目指しているのは、一貫性のあるカスタマージャーニーを生み出し、常に新しいコンテンツを提供することだ」とRosenmann氏は説明する。つまり、コンテンツが重要だということだ。「今では誰もがコンテンツチームの一員だ」と同氏は付け加えた。
問題は、多くの企業では、さまざまな用途のために設計された複数のコンテンツ管理システムが、分断された情報サイロの中に存在することだ。例えば、多くのCMSは特定の用途のために専用に開発されたものだ。また、多くのメディア企業は、自社製のCMSを使っているか、「Arc Publishing」のような製品を使用している。市販のシステムを複数つなぎ合わせて使っている企業も多い。G2は、Contentful、Butter CMS、Agility CMS、Contentstackなどをはじめとして、ヘッドレスCMSを提供しているソフトウェア企業を数多くリストアップしている。
提供:Salesforce
Salesforce CMSは、ドラッグアンドドロップ式のインターフェース、あらゆるシステムにコンテンツを配信できるヘッドレスAPI、外部および内部のサイトやアプリに接続する機能などを備えているが、もっとも重要なのはデータに基づくパーソナライゼーション機能かもしれない。また、「WYSIWYG」(What-you-see-is-what-you-get)式の編集ツールも搭載している。
Salesforce CMSは、CRMや顧客データを連携させ、これらをコンテンツとして扱ったり、イベントなどの情報をレイアウトすることができる。Salesforce CMSはこれまで試験運用中だったが、一般提供が開始され、現在は500サイトで利用されている。
Salesforceが同社のさまざまなクラウドやCRMのデータを連携させられるCMSで目指していることは、多くの意味でAdobeが掲げているビジョンと方向性が似ているかもしれない。Adobeは、クリエイティブ分野のプロフェッショナルや、データや顧客体験の領域に市場を拡大することに力を入れている。
企業のCMSが抱えている問題を解決できるか
Salesforceがコンテンツ管理システムをリリースしたことは、いくつかの意味で筆者の興味を引いた。筆者は、これまでに働いたほぼすべての会社で、CMSに関する失敗を無数に見てきた。それらのプロジェクトは計画段階では問題なさそうに見えたが、必要以上に機能が追加され、インスタンスが複数になると頭痛が始まるのが常だった。なぜシンプルに「WordPress」を使わないのかと何度も思ったものだ。
もちろん、そう簡単にいくものではない。WordPressを使っていた会社にいたこともあったが、そのシステムはほとんど自社製と言っていいほどカスタマイズされていた。WordPressにはセキュリティ上の問題が起こることもあるという問題もある。