2018年にIT業界の一大関心事となったIBMによるRed Hatの買収が2019年8月に完了した。オープンソースソフトウェアのディストリビューターとして独自の立場を築いたRed Hatに変化が訪れるのかについては、いまだ読みづらいという声も聞かれる。そこで、このほど来日したシニアバイスプレジデント 最高技術責任者(CTO)のChris Wright氏に、IBMとの製品開発体制やハイブリッドクラウドとソフトウェアベースに移りゆくITインフラの将来像を尋ねた。
米Red Hat シニアバイスプレジデント 最高技術責任者(CTO)のChris Wright氏
IBM製品と重なる領域は残る
--Red Hatは、IBMによる買収でも戦略に変更がないと説明してきた。買収が完了した現在、改めて方針を確認したい。
われわれの製品、技術の戦略や「オープンハイブリッドクラウドの世界を実現する」というビジョンは全く変わっていない。だからこそ、IBMがRed Hatを買収したと言える。IBMと一緒になった今、このビジョンの実現に向けて加速していくことになる。
--IBMは、まずソフトウェアを「Red Hat OpenShift」向けに最適化した「Cloud Paks」をリリースした。IBMとRed Hatの製品開発体制はどうなっているのか。
IBMとRed Hatの関係はパートナーであり、Red Hatには明確な製品ビジョンがある。「Cloud Paks」ではソフトウェアスタックとしてRed Hatの技術が採用され、IBMのソフトウェアがコンテナーとしてOpenShift上で稼働するようになった。OpenShiftの開発は、これまで通りオープンソースのコミュニティーやユーザー、IBMなどパートナーの声をもとに進めていくことに変わりはない。
--ただ、WebSphereとJBossのように領域が重複しているものもある。統合や再編などはあるのか。
領域が重複する製品に関しては、今後も基本的に共存していく。これまでユーザーが自身の要件に基づいてそれぞれの製品を選択してきた経緯があるからだ。
確かにミドルウェアの領域では、買収以前は双方の製品が競争関係にあった。しかしこれまでの経緯を鑑みれば、Red Hatがオープンソースの良さを生かしてエンタープライズ向けの製品を開発し、よりモダンなソフトウェアの開発ができるようコンテナー化やマイクロサービス化を進めていくという立場にも変わりはない。
Cloud PaksでRed Hat Enterprise Linux(RHEL)やOpenShiftを活用するといったように両社で協力して製品開発を進めていく領域があり、両社の技術的なビルディングブロックにおいて共通化していける部分でも協力して効率化を進めていく。また、オープンソースコミュニティーにおける活動でも両社で協力していく。