テクノロジーの進歩により、われわれの思考や感情をデジタルデータに変換し、共有することが既に実現されている。このブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)と呼ばれるテクノロジーは、特定の目的でわれわれの心とコンピューターをつないでくれる。そして、Facebookを含む大手IT企業や多くの新興企業はこのテクノロジーを普及させようとしている。
あなたは、自らが上司のことをどう感じているかや、秘密にしている恐怖の対象といったものをテクノロジーが記録、公開するのではないかという恐れを抱いているかもしれない。しかし、安心してほしい。
少なくとも今のところは大丈夫だ。
現時点でのBCIは、そのような細かい情報を収集できるほど洗練されていない。収集できるデータは、体を動かそうとする思考や、感情の状態に基づいたものといった方がよいだろう。しかし、機械学習(ML)アルゴリズムがより洗練され、BCIのハードウェア能力が向上していくと、今までよりも高い精度で思考を読み取ることが可能になるかもしれない。
現在のところ、人間の脳と外部のコンピューティングシステムを接続するためのアプローチが2つある。それらは侵襲的なものと非侵襲的なものだ。
非侵襲的システムは多くの場合、脳波計(EEG)と同じテクノロジーを用いて、頭皮に貼り付けた電極により、神経細胞が発する信号を読み取る。EEGは、神経科医がてんかん等の診断を下すために脳の電気的な信号(インパルス)を分析するために用いる機器だ。さらに非侵襲的システムでは、経頭蓋磁気刺激法(TMS)といった、これも医療分野で用いられているテクノロジーを用いて、脳に情報を送り込むこともできる。
一方、侵襲的システムはじかに脳と電極を接触させるというアプローチであり、慢性的なまひを抱えている人々をロボット義手やロボット義足といった人工器官で支援したり、視覚や聴覚に障害を抱えている人々の感覚を可能な限り回復させるために実験的に用いられている。
現時点において、侵襲的システムのハードルが高いのは明らかだ。手術は常にリスクを伴う。脳のようなデリケートな組織を扱う場合は特に難しい。ではなぜ、こうしたリスクがあるにもかかわらず、非侵襲的システムを選ぶのではなく、脳に電極を埋め込むという侵襲的システムを選択するのだろうか?その答えは例によって、トレードオフの存在だ。侵襲的システムの場合、脳内で起こっていることを、さまざまなごたごたに煩わされず、より容易に解析できる。