IntelのチーフアーキテクトであるRaja Koduri氏は今をさかのぼること14年前、新しい時代の幕開けに奔走していた。NVIDIAの最高経営責任者(CEO)Jensen Huang氏がGPUコンピューティングについて語り始める1年前のことだ。Koduri氏は当時、Advanced Micro Devices(AMD)に在籍していた。このGPUコンピューティングという考え方は、GPUがビデオゲームのグラフィックスを滑らかにする以上のこと、つまり科学的な数値演算を処理できるというところに端を発している。
Raja Koduri氏は、大規模並列コンピューティングシステムのプログラミングを簡潔なツールで実現するという話のなかで、「われわれはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に向けた変曲点にいる」と述べた。
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GPUコンピューティングは、人工知能(AI)の原動力になるとともに、さまざまなハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)での活用事例を増やしているという点で、そのビジョンは現実のものになったと言える。
Koduri氏は米ZDNetに対して、GPUコンピューティングが今なお発展を続けている革命だと言える理由について語ってくれた。
Koduri氏は「われわれはHPCに向けた変曲点にいる」と語るとともに、「20年前、HPCは垂直統合型のアーキテクチャーが主流だった(しかしその後)x86がコモディティ化し、オープンソースソフトウェアが台頭し、ライブラリーの爆発が起こった結果、HPCだけでなくすべてのクラスターが大量のソフトウェアを伴ったx86になった」と続けた。
同氏は、ソフトウェアにおけるこの展開によって、プログラム可能かつ、スーパーコンピューター並みにパワフルなコンピュートという新たな時代の幕が開けたと述べた。
「われわれは、AIの世界で起こっていることと、次なる飛躍の原動力となるヘテロジニアスアーキテクチャーの組み合わせによって生み出される次のサイクルを予見している」(Koduri氏)
Koduri氏がこのようにコメントしたのは、Intelが「Ponte Vecchio」という開発コード名のHPC専用の新GPUを発表した米国時間11月17日のことだ。これは製品化にはまだ1年以上かかるが、ディープラーニング(DL)向けに最適化されたマシンという、時代を象徴するものとなっている。
ただ、この新たなハードウェアよりも重要なニュースはおそらく、「oneAPI」と呼ばれる、ハイパフォーマンスなシステムのプログラミング向けソフトウェアツールキットのベータ版リリースだろう。oneAPIは、さまざまな種類のプロセッサーやシステムをまたがったかたちで、スーパーコンピューターが扱うようなタスクのプログラミングを容易にするというものだ。
Intelの「oneAPI」ソフトウェアの使命は、同社が「ビュッフェ形式」で提供するさまざまなチップ製品を取りまとめるというものだ。こういった製品の1つであり、「Ponte Vecchino」という開発コード名で呼ばれている現在開発中のGPUは、米エネルギー省のアルゴンヌ国立研究所での設置作業が進められている「Aurora」スーパーコンピューターに搭載される。なお、Auroraは2021年に納入される予定だ。
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