多くの人が利用する仮想マシン(VM)OSとして「Ubuntu」がクラウドで優位に立っているのを受け、CanonicalはUbuntu Linuxで最もよく知られている。だがこの度、Canonicalは新たな事業を始めようとしている。Ubuntuベースのクラウド上に「Android」アプリのプラットフォームを構築する「Anbox Cloud」だ。ユースケースとしては、クラウドゲーミングのほかエンタープライズワークプレースアプリケーション、ソフトウェアテスト、モバイルデバイス仮想化などが想定されている。
Anbox Cloudのスタック
提供:Canonical
Androidと聞けば、誰もがクラウドではなくスマートフォン上のOSのことを考えるだろう。それでも、ユーザーも独立系ソフトウェアベンダー(ISV)も、ハイエンドのゲームのような、要求が厳しいAndroidアプリケーションをさらに大型のスマートフォンで利用したいと考えている。
ゲームなど、要求の厳しいアプリに対するこうした新しいアプローチは、4G LTEが広く普及し、5Gが最終的に軌道に乗り、エッジコンピューティングが勢いを得るかどうかにかかっている。こういった技術の発展により、リッチなゲーミングや、製造、小売り、物流、運送、ヘルスケアなどの分野に特化したアプリケーションをスマートフォンに配信できるようになる。だが、タブレットやスマートフォンでこういったアプリを利用するには、大きな欠点が1つある。ハイエンドのアプリケーションを動かすにはプロセッサーやグラフィックのパワーが不足しているのだ。そこで、Anbox Cloudの出番となる。
Anbox Cloudにより、開発者は、グラフィックを多用しメモリーを大量に消費するモバイルゲームなどのアプリケーションを開発できる。そうしたアプリケーションは、多くのユーザーに規模を拡大しながら、ゲーマーが求める反応性や超低遅延性を実現できる。ゲームをダウンロードするのではなく、SaaS(Software-as-a-Service)モードでAndroidのゲームを動かすわけだ。また、ISVに対しては、保護されたコンテンツ配信チャンネルを提供する。
Canonicalの説明によれば、Anbox Cloudは同社のさまざまな技術をベースにしているという。Anbox Cloudは、コンテナ化されたAndroidアプリを「Ubuntu 18.04 LTS」カーネル上で動かす。コンテナ化は、隔離された安全な「LXD」システムコンテナによって行われる。これらのコンテナは、VMよりもはるかに軽量だ。Anbox Cloudのサービスプロバイダーにとって、これはVMでAndroidアプリを稼働する場合と比べて、アプリケーションの密度が2倍以上になることを意味する。
リモートでのインフラプロビジョニングには、MAAS(Metal-as-a-Service)が利用される。Canonicalが手がけているオープンソースのDevOpsツール「Juju」は、デプロイや管理を容易にし、運用コストを下げる自動化ツールを提供する。Anbox Cloudとそのコンポーネントを動かす上で技術サポートが必要な場合は、「Ubuntu Advantage」のサポートを利用できる。これにより、最長10年間、継続的なサポートとセキュリティアップデートが提供される。