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NTTデータ イントラマート中山社長に聞く、20年で変えたこと、変えなかったこと

國谷武史 (編集部)

2020-02-07 06:00

 1998年にNTTデータの社内ベンチャーとして生まれたNTTデータ イントラマート。2000年に専門会社として独立し、ワークフローやビジネスプロセスマネジメント(BPM)領域のパッケージ製品やサービスプラットフォームを手掛けて20年目を迎える。国内最大級のシステムインテグレーター(SI)グループの中では独特な存在だ。設立メンバーで代表取締役社長を務める中山義人氏に、20年の歴史と今後の展開を聞いた。

--設立の経緯を教えてください。

 私は1992年にNTTデータに入社しました。現在は受託開発ビジネスが見直されつつありますが、当時からお客さまに言われたものをそのまま作るより、自分たちが作ったものを世の中に問うてみたいという気持ちが強くありました。

NTTデータ イントラマート 代表取締役社長の中山義人氏
NTTデータ イントラマート 代表取締役社長の中山義人氏

 社内に小さいながらも新規事業に取り組む部署があり、そこでERP(統合基幹業務システム)パッケージ開発を担当しました。しかし、事業として軌道に乗ることができず、理由を私なりに考えてみると、その1つは自前主義にありました。ネジ1本から自分たちで作るように、非常に高コストだったのです。また、直販の文化もありました。全国に多数の人員を配置していましたが、やはり“基盤に徹する”という意識があり、新規事業をどれだけやっても黒字になりづらかったのです。

 そこで「自分でするにはどのような方法があるのか」と考え、社内ベンチャー制度に応募したところ認められました。当初の資金は数千万円ほどで、本業と同じビジネスモデルで新規事業を展開することができません。そこでゼロから作ることを止め、オープンソースソフトウェア(OSS)を活用しながら自分たちの付加価値を出すところに集中し、営業も私一人だけで直販ができませんから、全国のパートナーと共創していくことにしました。

 製品開発では、当時から現在まで自分たちが開発したソースコードを公開して自由に開発できるようする「Open&Easy」をコンセプトにしています。ERPパッケージのようなユーザーが製品に使い方を合わせていくスタイルとは反対に、パッケージ製品の方を変えてユーザーが柔軟にフィットさせることができるようにしました。この点が評価され、初年度から現在まで黒字を続けることができています。

--20年の間にさまざまな変化があったと思いますが。

 最初の転機は、国内企業で内部統制への対応が課題になった2002~2003年頃のことです。事業の証跡を管理する必要性からいきなりワークフロー製品市場が出現しました。われわれは、既にワークフローの原型となる機能を取り入れていましたので、その点が注目され、現在まで12年連続のトップシェア(富士キメラ総研調査)を獲得しています。ワークフロー製品は従業員規模が大きいほど導入効果が高く、多数の大手企業に導入され、市場の拡大に応じて成長を続けることができました。その勢いに乗って、2007年に東証マザーズに上場しました。

 ところが、その直後に販売が低迷しました。リーマンショック(2008年)の影響もありましたが、ワークフロー市場が急速に成熟化してしまったのです。ワークフローの三大機能は勤怠、旅費、小口精算で、これがすぐに大半の企業に行きわたりました。この流れは事前に予想されていたので、上場で得た資金を新製品の開発に当てましたが難航してしまい、2013年に現行版の「intra-mart Accel Platform」をリリースしました。

 intra-mart Accel Platformは、強みのワークフローを周辺領域、いわゆるBPMに広げることを目指した製品です。ワークフローが対象とした紙文書による稟議(りんぎ)は日本独自の企業文化で、市場も日本だけですから外資系ベンダーの参入がありません。しかし、BPMはIBMやOracleといった大手が存在するグローバル市場であり、われわれも独自色で対抗しましたが、製品が全く売れず、赤字すれすれの状態にまで陥りました。

 そこで開発と営業が一緒にお客さまを訪問して直接意見を聞くことを繰り返したところ、製品を導入してもほとんど使われない実態が判明しました。実は、ワークフローはどんな企業でもほぼ共通しているので業界や業種ごとの知識がなくても売れますが、BPMは製品の使われ方が業界・業種ごとに違います。そのことを知らないまま製品を提案しても、お客さまと話ができません。社内もワークフロー製品の成功体験にしばられ、「作れば何でも売れる」というプロダクトアウトの発想にとらわれていました。

 改めてお客さまが製品を使うために必要な機能や要件を徹底して、再度開発した機能を直接お客さまに確認してもらう作業をとにかく繰り返しました。お客さまの声を直接聞くようにしたことでだんだん製品が売れるようになり、今期(2020年3月期)はBPM製品の成長が前年比60%増で推移するまでになりました。

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