日立製作所は1月31日、2019年度第3四半期累計(2019年4~12月)連結業績を発表した。その中で「Lumada」事業の売上収益が前年同期比11%増の8390億円となったことを明らかにした。Lumadaのコア事業の売上収益は24%増の2540億円、SI事業の売上収益は6%増の5850億円となっている。
Lumadaのコア事業は、顧客データをAI(人工知能)やアナリティクスの活用によって価値に変換し、顧客の経営指標の改善や課題解決を図るサービスを指す。SI事業は、コア事業が牽引する産業、社会インフラなどのIoT分野のシステムインテグレーション事業を指す。
業績説明を行った日立製作所 執行役専務CFO(最高財務責任者)の西山光秋氏
同社は、1月に日本ヴァンタラと日立コンサルティングを統合し、Lumada事業のグローバル展開に向けた営業を開始した。また、大みか事業所(茨城県日立市)が世界経済フォーラムの定める先進工場「Lighthouse」に、日本の工場として初めて選出されたが、これについては「Lumadaソリューションにより、バリューチェーン全体の運用高度化、最適化を実現した点が評価されている」(執行役専務 CFOの西山光秋氏)とした。
また、Lumadaの成果として損害保険ジャパン日本興亜およびSOMPOリスクマネジメントとの協創により、CMOSアニーリングによる新型コンピューターを活用した損害保険ポートフォリオの最適化に関する実証実験を開始したことも挙げた。
Lumadaのユースケースは約750件に達しているが、「海外比率はコア事業、SI事業ともに1割程度。海外比率がまだ低い。今後は日本ヴァンタラと日立コンサルティングの統合会社が海外事業を牽引していくことになる」(西山氏)という。
2019年度通期(2020年3月期)の見通しは、Lumada事業全体で前年同期比4%増の1兆1700億円、そのうちコア事業の売上収益は10%増の3700億円、SI事業の売上収益は1%増の8000億円としている。
なお、日立ハイテクノロジーズに対する公開買付けを2020年2月に開始することを決定した。計測、分析プラットフォームの確立によってLumadaを強化し、デジタルサービスによる変革を実現し、グループ全体での成長につなげるという。「日立ハイテクノロジーズの全てを(日立製作所)本体に取り込むことで、Lumadaとのシナジーを出しやすい環境が整うと考えている」(西山氏)とした。
一方、日立製作所の連結業績は、売上収益が前年同期比6.5%減の6兆3441億円、調整後営業利益が同16.6%減の4456億円、EBITが同82.0%減の549億円、継続事業税引前四半期利益が同83.0%減の521億円、当期純利益は同33.3%減の551億円だった。
西山氏は、「三菱日立パワーシステムズの南アフリカプロジェクトに関わる和解に伴う損失を計上している。Lumada事業は好調であり、5セクター(IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフ)の調整後営業利益率は7.5%と、過去最高レベルを維持している。だが日立金属、日立建機、日立化成などの子会社が厳しい内容になっている」とした。
国内売上収益は前年同期比2%減の3兆1534億円、海外売上収益は10%減の3兆1907億円、海外売上比率は53%だった。為替影響を除くと国内は前年並み、海外は5%減になる。
事業部門別では、ITの売上収益が前年同期比1%増の1兆4942億円、調整後営業利益が0.5%増の1656億円、EBITは0.6%減の1581億円。「海外向けストレージの販売減はあったが、システムインテグレーションが堅調であり、この販売減をカバーした。デジタルソリューション事業拡大に向けた戦略投資を増やしているが、それを吸収して増益である」と西山氏は総括した。
一方でエネルギーの売上収益は10%減の2457億円、調整後営業利益は118億円減のマイナス14億円。インダストリーの売上収益は2%増の5549億円、調整後営業利益は21億円増の255億円。モビリティの売上収益は8%減の8326億円、調整後営業利益は38億円減の613億円。ライフの売上収益は11%減の1兆768億円、調整後営業利益は165億円増の440億円。その他部門の売上収益は17%減の3516億円、調整後営業利益は97億円減の168億円だった。
また上場子会社は、日立ハイテクノロジーズの売上収益が4%減の5169億円、調整後営業利益は32億円減の481億円。日立建機の売上収益は8%減の6871億円、調整後営業利益は263億円減の579億円。日立金属の売上収益は13%減の6709億円、調整後営業利益は309億円減の118億円。日立化成の売上収益は8%減の4796億円、調整後営業利益は109億円減の283億円だった。
2019年度の通期業績見通しは、売上収益が前年比8.2%減の8兆7000億円と据え置いたものの、調整後営業利益は前回見通しから160億円減となる同11.4%減の6690億円、EBITは同200億円減となる同5.6%減の4850億円、継続事業税引前利益は同130億円減の同7.1%減の4800億円と、それぞれ下方修正し、当期純利益は前年同期比23.6%減の1700億円と据え置いた。「第3四半期における中国、アジアの売上減が大きく影響し、これを反映して修正を行った」(西山氏)という。
ITセグメントの売上収益見通しは前年比2%減の2兆700億円と据え置いたが、調整後営業利益は110億円増加し、前年比8億円増の2310億円とした。「国内向けのIT投資が堅調に推移しており、ITサービスが伸張。その改善を織り込んだ」(西山氏)という。
なお、新型コロナウイルスの影響について西山氏は、「現時点で業績への影響を定量化するのは難しい。さらなる感染の拡大やサプライチェーンへの影響などを懸念している。状況を注視していく。だが、Lumada事業を中心に、それぞれの地域でサービス、ソリューション事業を立ち上げていく方針であり、域内できちんとした事業を立ち上げていく。マクロ経済の回復は見込めない。短納期品の積み上げ、サービス事業の取り込み、コストコントロールも継続し、2019年度は営業利益の達成に取り組む」などと述べた。