IBMと富士通が先頃、相次いで注目の人事を発表した。IBMは首脳人事、富士通は外部人材の登用だ。それぞれの人事の背景を探ってみたい。
IBMの新CEOにクリシュナ氏、その次は…
写真1.IBMの新CEOに就任するArvind Krishna氏(出典:IBM)
IBMの首脳人事は、CEO(最高経営責任者)のGinni Rometty氏が4月6日付で退任し、後任にクラウド部門などを統括するシニアバイスプレジデントのArvind Krishna氏が就任。また、Rometty氏が兼務していたプレジデントに、シニアバイスプレジデントでIBMが2019年に買収したRed HatのCEOを務めるJim Whitehurst氏が就任するというものだ(写真1、写真2)。
写真2.IBMのプレジデントに就任するJim Whitehurst氏(出典:IBM)
IBMのCEO交代は8年ぶりとなる。発表内容については関連記事をご覧いただくとして、筆者が注目したのは、Krishna氏のCEO就任もさることながら、Whitehurst氏がプレジデントに就くことだ。IBMにとってRed Hatの買収は340億ドルを投じた一大事だったことから、その相乗効果を一段と促進する狙いがあるのは明らかだ。
それとともに、Rometty氏やKrishna氏がWhitehurst氏を高く評価していることがうかがえる。Red Hatの買収をめぐっては、Krishna氏がWhitehurst氏との交渉役を担い、Rometty氏が最終的に意思決定を行ったとされる。両氏はその過程で、Whitehurst氏の手腕を評価し、Rometty氏はRed Hatの買収とともに、「Whitehurst氏には今後のIBMをけん引するリーダーになってもらいたい」との思いがあると、筆者はかねてIBM内部に詳しい関係者から聞いていた。
また、Krishna氏も今回の発表に際して、「IBMは今後、信頼できるテクノロジーの責任ある活用におけるグローバルリーダーの地位を維持し、ビジネスの変革を進めるとともに、お客さまを支援できる素晴らしい機会が待っている。Whitehurstは、この取り組みの次のステップにおいて素晴らしいパートナーとして活躍してくれるだろう」とコメントしている。これを深読みすると、「バトンをつなぐ」意図を込めているようにも受け取れる。
加えて年齢に注目すると、Rometty氏が62歳、Krishna氏が57歳、Whitehurst氏が52歳。この年齢差からすると、Krishna氏の長期政権は考えにくく、4〜5年後にWhitehurst氏がCEOに就く可能性は十分にある。ただ、重要なのはそうしたシナリオが見えてきた中で、Whitehurst氏がIBM首脳としてこれからどれだけの実績を上げ、社内外の信頼を得られるか――だ。