短期集中連載「NRF 2020レポート」
- 第1回:Walmartだけではない、変貌するグローバルリテーラーのデジタル変革による狙いとは(本稿)
- 第2回:デジタル変革を進める中で直面する3つの壁
- 第3回:デジタル変革を通して未来の姿を描くということ--国内リテーラーへの示唆(近日公開)
近年、リテール業界におけるデジタル変革の波が本格化している。われわれ消費者の目の届く範囲においても、デジタル技術を活用し、利便性の向上や業務の効率化を図ろうとする場面に遭遇する機会が増えている。
しかしながら、デジタル変革には、具体的な投資対効果の試算が難しい側面もある。そのため、デジタル変革の必要性は理解しているが具体的な投資までは出来ていない、もしくは限定的とするリテーラー(小売・流通企業)が多い。そうした背景の中、デジタル変革で一定の成果を出しつつあるグローバルリテーラーの成功事例や次の一歩に注目が集まることは必然であろう。
米国ニューヨークで2020年1月に開催された「NRF 2020(世界最大規模のリテールイベント、NRF Retail's Big Show)」においても、積極的にデジタル変革を進めるStarbucks CEO(最高経営責任者)のKevin Johnson氏や、Nordstrom Co-President(共同社長)のErik Nordstrom氏が基調講演を務めており、その先進的な取り組みに、参加したリテール関係者の注目が集まっていた。また、オープニングキーノートではMicrosoft CEOのSatya Nadella氏が登壇し、デジタル変革が進むリテーラーの位置づけや可能性について熱く語った。
それらの内容から、デジタル変革を進めてきたリテーラーは次の段階、つまり“オンライン・オフラインのデータを集めること”から“膨大なデータを、AI(人工知能)を活用して分析し、消費者や従業員へ新たな価値を提供すること”へと、その取り組みが本格的に移りつつあることを感じた。そして、リテーラーの位置づけや店舗で働く従業員の役割を再定義することが必要になると確信を持つことができた。
本稿では、デジタル変革に注力するグローバルリテーラーと、いち早く変革を遂げたWalmartに焦点を当て、積極的なデジタル変革を進める狙いと、具体的な取り組みについて、NRF 2020で得られた情報をもとに考察する。
オープニングキーノートに登壇し、テクノロジー活用によるリテーラーの新たな可能性について語るMicrosoft CEOのSatya Nadella氏