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デジタルトランスフォーメーションが進む世界の小売業界動向

阿久津良和

2019-11-19 06:00

 日本マイクロソフトは11月18日、小売業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の現状に関する説明会を開催した。米Microsoft CVP グローバルリテールおよび消費財担当のShelley Bransten氏は、多くの小売企業がレガシーシステムに多くの時間を費やしており、「その原因はデータがロックされているためで、顧客を知らずにインテリジェントなサプライチェーン(供給連鎖)を提供できずにいる」と課題を指摘した。これを踏まえ同社は、共通データモデル(Microsoft Common Data Model)などの技術で「顧客の理解」「インテリジェントサプライチェーンの実現」「従業員の能力向上」「小売りの再考」と、4つのシナリオを実現してきたと説明する。

米Microsoft CVP グローバルリテールおよび消費財担当のShelley Bransten氏
米Microsoft CVP グローバルリテールおよび消費財担当のShelley Bransten氏

 Microsoftは、業界別のDX推進に取り組む。2020年1月には、世界最大規模の小売業界向けカンファレンス「NRF Retail's Big Show 2020」の基調講演に、同社CEO(最高経営責任者)のSatya Nadella氏が登壇する予定で、同社にとって小売は注力業界の1つになっている。この日の説明会でBransten氏は、「リテーラー(小売業者)自体が変化している。単にIT技術を提供するのではなく、小売業におけるパートナーシップの時代を迎えた」と語り、グローバル顧客の事例を紹介した。

 イタリア最大の家具小売企業のNatuzziは、米国・マンハッタンに設けたショールームにリビングルームの写真を持ち込むことで、「Microsoft HoloLens 2」を使って“仮想化”した家具を設置してどのように見えるのかを実演しているという。また、実際のコンバージョンレート(反響率)の改善や、在庫を確保する倉庫のコストからも解放された。小売業の課題である従業員の離職率も従業員たちがIT技術を楽しむことで大幅に改善されたという。

 Starbucksは、Microsoftが開発したインテリジェントエッジデバイス「Azure Sphere」を店舗内の機器にIoTデバイス経由で接続させている。消費者が注目の30%を占めるスマートフォンアプリで注文すると、消費者が店舗を訪れるタイミングに合わせてコーヒーを提供できるようにした。「消費者の到着時間を把握でき、冷めたコーヒーを廃棄せずに済む」(Bransten氏)といい、インテリジェントなサプライチェーンの好例に挙げた。

 世界有数の一般消費財メーカーUnileverの1つブランドである「Dove」では、工場がブラジル・サンパウロにあり、Microsoftに「工場を6週間で『デジタルツイン』」にしたいと要望した。ここでのデジタルツインとは、設計改善によるコストダウンや問題発生時の原因究明と影響範囲の特定、製品や設備の予防保守などを目的にしている。サイバー空間での分析やシミュレーションによる結果を物理空間のシステムなどの制御に反映させるソリューションであり、サイバー空間と物理空間をまたがる“デジタルの双子”との意味で、こう名付けられた。

 Bransten氏によれば、同社はパートナー企業およびUnileverの開発者と、Microsoft Azure上にデジタルツインソリューションを構築した。「生産性が1%向上し、Unileverの規模では年間550億ドルの改善をもたらした」(Bransten氏)という。Unileverは2019年内に70カ所、2020年にはさらに100カ所まで既存工場のデジタルツイン化を目指す。

 米スーパーマーケット大手チェーンのKrogerは、2019年1月7日に、Microsoft Azureを用いて「RaaS(Retail As A Service)」ソリューションを提供していくと発表した。これは競合他社にもソリューションを提供することで、単なる小売企業から新たなビジネスモデルに着手したケースになる。Bransten氏は詳細には踏み込まなかったが、日本でも着々と進む新規事業創出案件に通じる点が多いとされる。

 一方で日本における小売業界の事例は、まだ発表段階に至っていないことから語られなかったが、Bransten氏は「顧客のシームレスな体験を提供するコンビニエンスストアのデジタル化が興味深い。買い物客がカートで通路を移動し、家族のために何を買うべきかをリアルタイムで推奨できる」とその一端を述べた。

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