Gartnerは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受け、以前に発表していた2020年の世界IT支出予測を引き下げ、3兆4600億ドル(約370兆円)とした。
同社は1月に、データセンターシステムやエンタープライズソフトウェア、デバイス、ITサービス、通信サービスに分類した世界のIT支出が2019年の約3兆7600億ドル(約402兆円)から2020年には3兆8700億ドル(約414兆円)に成長すると予測していた。
しかしこの予測は、COVID-19のパンデミックによって世界規模の混乱が始まる前のものだ。
COVID-19のアウトブレークによって、ロックダウンや移動の禁止、失業、事業活動の停止が引き起こされ、世界経済に激震が走った。その影響を受けた数多くの業界のうちの1つであるIT業界は現在、成長よりも復旧に力を注いでいる状態だ。
Gartnerによると、デバイスの購入やクラウドテクノロジーといった、1月の予測で挙げていた成長要因があっても、2020年の世界IT支出は前年比8%減になるという。
企業を取り巻く状況はあっという間に大きく変化し、各社は在宅勤務や、従業員の自宅待機/削減、オフィスの閉鎖を余儀なくされた。最高情報責任者(CIO)らは自社のリソースを、これまでとは大きく異なる状況への対応に集中させている。その結果、支出は変革や企業の成長を促すためのものではなく、通常の事業運営をできる限り維持するための「必要不可欠」なテクノロジーやサービスを優先するようになっている。
Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデントであるJohn-David Lovelock氏によると「CIOは急を要するコスト最適化に取り組んでいる。つまり支出を最小限に抑え、事業を継続する上で必要となる業務を優先しようとしている。これがほとんどの企業にとって、2020年の再優先事項になる」という。
Gartnerは今回、2020年を通じて、あらゆるITセグメントで支出が低下し、デバイス購入とデータセンターシステムが最も大きく落ち込むと予測している。しかし、COVID-19パンデミックはリモート会議ツールやパブリッククラウド製品といった、一部のテクノロジーに対する需要も生み出している。
同社によると、2020年にはパブリッククラウドサービスが19%の伸びを、クラウドベースのテレフォニー及びメッセージングが8.9%の伸びを、クラウドベースの会議ソリューションが24.3%もの増加を見せるという。
Lovelock氏は「IT支出の回復は2020年を通じて緩慢なものとなり、エンターテインメント業や航空輸送業、重工業といった業界に最も大きな影響が及ぶ結果、2019年のIT支出レベルに戻るまでに3年はかかるだろう」と述べ、「ほとんどの企業にとって、回復にはマインドセットの変革が必要となる。元の状態に戻ることはなく、前進していくためには、ものごとをリセットする覚悟も必要となる」と続けた。
Gartnerも新型コロナウイルスの影響と無縁ではない。同社は3月、新型コロナウイルスの感染拡大により、8月までに予定されているすべてのカンファレンスの現地開催を中止または延期すると発表した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。