最近では、IT運用に人工知能(AI)を利用する「AIOps」の概念が定着してきている。GartnerはAIOpsを、AI、ビッグデータ、機械学習の組み合わせによって、主要なIT運用機能を管理することだと定義している(これには可用性やパフォーマンスのモニタリング、イベントの関連付けや分析、ITサービスの管理と自動化などが含まれる)。Gartnerは、AIOpsやデジタルエクスペリエンス監視ツールをアプリケーションやインフラに利用する大企業は、2018年には5%だったが、2023年には30%にまで増加すると予想している。
提供:Joe McKendrick
また、この数カ月間で在宅勤務を行う企業のチームが増えたことも、できるだけITを自動的に運用できるようにすべきだという認識が強まっている理由の1つかもしれない。しかし、AIOpsが持っている意義は、新型コロナウイルスの危機対応だけにとどまるものではない。IT部門が力を入れている活動の多くが、企業規模でのAIの開発、規模の拡張、サポートなどのAI関連の取り組みだが、今や次世代のAIの開発や導入、管理にAIが利用されるようになりつつある。
企業のIT部門はAIOpsからどんな恩恵を受けられるのだろうか。IBM Watsonのエンジニアリング担当バイスプレジデントJessica Rockwood氏は、最近公開した記事でいくつかの例を挙げている。その内容は、WatsonプラットフォームのAIOps機能の強化に関するIBMの発表に沿ったものになっている。
- 「パフォーマンスに関するアラートから、インシデントチケットに至るまで、ITインフラの多種多様なデータソースからデータを収集する。このデータはコスト削減に役立つほか、ITリソースに対する需要が少ない時間帯を把握し、自動的にコンピューティングリソースを調整することによって生産性を向上させることができる」
- 「自動的に調整を行うことが望ましくない場合、IT運用マネージャーやサイト信頼性エンジニア(SRE)に対して、データを視覚的に分かりやすい形で提供し、同時に推奨される対応や、その対応を推奨する理由も示すことができる」
- 「特定のルーターから別のルーターにトラフィックを移動させる、ドライブに空きスペースを作る、アプリケーションを再起動するなどの作業を自動化する」
- 「AIシステムは、自己修正できるようにトレーニングすることもできるため、IT部門のマネージャーやチームは、企業の運用状況を全面的に可視化して把握しつつ、同時に価値の高い作業を進めることができる」