新型コロナウイルスの影響を受けて在宅勤務が定着する中、人事制度の見直しに動き始めた企業が出てきた。キーワードは「ジョブ型雇用」だ。これを機に、雇用形態について筆者から提案を2つ申し上げたい。
「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ転換
新型コロナウイルスの影響が続き、在宅勤務の定着などで働き方改革を進めることが必然の中、これを機に人事制度の見直しに動き出す企業が相次いで出てきている。見直しの中身は、雇用形態において従来の「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ転換を図ろうというものである。
ジョブ型雇用については、経済団体連合会(経団連)がかねて検討を進めてきており、2020年に入って改めて日本の雇用形態の転換に向けた働き方改革のキーワードとして取り上げたところへ、コロナ騒動が巻き起こった。
そうした経緯もあることから、以下のジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の説明は、経団連が発信している内容に基づいて紹介しておこう。
ジョブ型雇用とは職務を中心に採用する雇用契約のことで、採用してから配属する従来の日本企業の採用方法とは異なり、明確化した職務に対して雇用するプロセスである。
一方、メンバーシップ型雇用とは従来の日本企業の採用方法で、仕事内容や勤務地などを限定せず、会社にマッチする人を採用するプロセスである。
メンバーシップ型は人が会社に就く「就社型」、ジョブ型は職務に人を就ける「就職型」とも言われる。ただし、前者は新卒採用で能力やスキルが無くても教育を施して終身雇用を前提とするが、後者は職務遂行に対する能力やスキルで評価され、それらが足りないと判断されれば解雇もあり得る。
もう1つ、前者は労働時間で管理されるが、後者は時間に関係なく成果で評価されることも重要なポイントである。
ということで、ジョブ型雇用を採用する企業の動きとしては、IT分野では、富士通が2020年度から国内の課長職以上の約1万5000人を対象に導入し、その後、他の社員にも広げていく構えだ。また、日立製作所も2021年4月から約2万3000人を対象に導入する計画を明らかにしている。