計測ソリューションのキーサイト・テクノロジーは7月14日、年次イベント「Keysight World」の開催に合わせて事業戦略説明会をオンラインで開き、次世代移動体通信や量子コンピューティング、電動自動車などの領域に注力すると表明した。
同イベントは日本が発祥といい、2020年は世界的なコロナ禍を受けてオンラインで開催される。今回は「イノベートネクスト」をテーマに掲げる。代表取締役社長のチエ・ジュン氏は、「どんな状況においてもイノベーションを継続していくことをテーマとしており、当社も計測アプリケーションを無償提供するなど顧客の支援に取り組んでいる」と話した。
キーサイト・テクノロジー代表取締役社長のチエ・ジュン氏
同社の計測ソリューションは、特に先端技術が開発される業界で利用される。ジュン氏は注目業界として、航空・宇宙、自動車・エネルギー、IoT、ネットワークアプリケーション・セキュリティ、コマーシャル通信の5つを挙げた。
「従来は航空・宇宙が先端技術の生まれる場であったが、現在はこれら全てがつながり、しかも複雑化している。加えて設計開発からリリースまでのサイクルが短期化し、顧客も収益性のためにさらなる生産性の向上を求めている」(ジュン氏)とし、同社もこうした動向に対応すべく、例えば、ネットワークアプリケーション・セキュリティ分野で2018年に旧イクシアコミュニケーションズを買収するなどしている。
特に日本市場では、6G(第6世代移動体通信システム)や量子コンピューティング、自動車業界の「CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous/Automated:自動化、Shared:シェアリング、Electric:電動化)」に着目する。
移動体通信分野では、3月に5G(第5世代移動体通信システム)の商用サービスが開始されたばかりだが、6Gは2030年頃の商用化が期待される。ジュン氏は、5Gについては2016年頃から計測・検査ソリューションを通信機器メーカーなどに展開してきたと説明。「5Gの世界はこれからだが、われわれは次の世代の準備段階から支える立場。6Gでは1テラビット/秒の超大量データ通信や100GHz以上の極めて高い周波数帯の利用などが大きな課題になる。既にテストベッドを構築し研究開発で提供している」と述べた。ここでは計測装置だけでなくシミュレーション用のソフトウェアも提供し、6G関連技術開発の効率化も支援している。
社会では5Gサービスが始まったばかりだが、研究開発では次世代の6Gが本格化しつつあるという
量子コンピューティング分野では、2016年にフォトニクス技術を手掛けたSignadyneや2020年にはマサチューセッツ工科大学ベンチャーのLabber Quantumを買収し、量子コンピューターに対応する検査・測定ソリューションを展開していくという。
量子コンピューティング分野の戦略
自動車業界の「CASE」では、特に電動化にフォーカスしており、同社では米国、ドイツ、中国、日本(名古屋)の世界4カ所に自動車関連の顧客企業を支援するカスタマーセンターを展開している。新たに、電気自動車での高出力・超急速充電のインターフェースを試験・検証するソリューションを提供することを発表した。