米ZDNet編集長Larryの独り言

量子コンピューティングのスタートアップIonQのCEOが考える未来

Larry Dignan (ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2021-01-21 06:30

 IonQは量子コンピューティングの商用化という計画を有しており、Peter Chapman氏はその計画を実現すると期待されている同社の最高経営責任者(CEO)だ。

 米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士の息子であるChapman氏は、16歳の時にマサチューセッツ工科大学(MIT)の人工知能(AI)研究所で働き始め、IBM PC向けとして初となるサウンドカードを生み出し、米連邦航空局(FAA)のためにソフトウェアを開発し、視覚障がい者向けのツールを開発するRay Kurzweil氏の企業を率いたこともある人物だ。

 簡潔に述べると、Chapman氏はテクノロジーの先端を走ってきている。同氏は量子コンピューティングが「汎用人工知能」(AGI)を実現する鍵になると考え、2019年にIonQのCEOとなった。

 IonQは最近、ロードマップを発表するとともに、「アルゴリズミックキュービット」(AQ)という新たな性能指標を提案してニュースの見出しを飾っている。

 IonQは、その初期段階からベンチャーキャピタル企業New Enterprise Associates(NEA)の投資を受けている。NEAの投資は、同社のプリンシパルらが、IonQの共同創業者であるメリーランド大学教授のChris Monroe氏とデューク大学教授のJungsang Kim氏による科学論文に目を通したことに端を発している。Chapman氏は「通常の場合、誰かがアイデアを発案し、資金を求めて投資家を追い求める。しかし、われわれの場合はまったく逆だった」と説明し、「その論文は基本的に、量子コンピューターの開発に必要なすべての構成要素の設計図となっていた。このため彼らは『分かった。ではこれを実現してみよう』と述べ、物事が回り始めた」と述べた。

 IonQは現在、Amazon Web Services(AWS)やサムスン、Lockheed Martin、Hewlett Packard Enterprise(HPE)などからの投資を受けている。

 以下は、量子コンピューティングの未来についてChapman氏と語り合った内容の中から重要な点を抜粋したものだ。

量子コンピューティングの普及はクラウドコンピューティングによって加速される

 Chapman氏によると、開発者はクラウドインスタンス上に量子システムを配備する能力に引きつけられるという。同氏は次のように述べた。

 クラウドはわれわれに2つの物事をもたらしてくれた。1つ目は、クレジットカードで10ドル(約1040円)を支払うだけで、AWSや「Microsoft Azure」のアカウントを開設し、IonQのコンピューターの1つを実際に使って量子プログラムの実行を始められるようになる。このため、将来的にアプリケーションが構築されていく中で、コンピュータービジネスのように大企業での量子コンピューティングの応用や、小規模企業で量子版スプレッドシートのようなものを生み出していくことが可能になる。このため、われわれは幅広い開発者オーディエンスにリーチしたいと考えたのだ。

 またChapman氏は2つ目の物事として、IonQがクラウドのおかげで稼働時間にフォーカスするようになった点を挙げた。なおIonQは、同社のシステムをオンライン化し、使用可能時間を高めるために約14カ月を要したという。

IonQ

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