IBMはこのところ、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud Platform」(GCP)をまたがるクラウド配備の管理ソリューションを手がける企業を買収してきている。
これは、IBMがマルチクラウド界のスイス、すなわちマルチクラウド管理ソリューションで中立の立場をとる企業になろうとしていることを意味している。Red Hatを傘下に持ち、オープンソースに積極的に取り組んでいるIBMは、顧客のハイブリッドクラウドを運用できる。また、買収を通じて新たに獲得した資産により、クラウドのコネクターたる企業になるためのコンサルタントも確保できるはずだ。
大企業はワークロードを任意のプロバイダーに移せるようにしておきたいと考えるため、マルチクラウドはクラウドコンピューティング分野の大きなトレンドとなっている。従来型のデータセンター企業もマルチクラウドに対する取り組みで重要な一角を占めており、ハイパースケールクラウドプロバイダーでさえ競合クラウドを管理するための製品を提供している。マルチクラウドは大企業にとって魅力的なセールスポイントであるとともに、野心的な目標となっている。また、企業はベンダーロックインのリスクを認識しており、クラウドをまたがって自社のアプリケーションを移動できるようにするために、それらを抽象化しておきたいと考えている。
IBMは最近、以下のような企業の買収を発表している。
- Taos:クラウド関連のコンサルティングやマネージドサービスを手がける企業。IBMのグローバルビジネスサービス担当最高執行責任者(COO)John Granger氏は、Taosのプラットフォームには、複数プロバイダーからのクラウド選択機能を顧客に提供できるという特長があると述べている。
- Nordcloud:欧州のクラウドインテグレーター。同社はAWSとAzure、GCPという3つのクラウドプロバイダーから認証されている。
- 7Summits:Salesforce製品のインテグレーター。
IBMはこれらの企業を買収する以前に、WorkdayやSalesforceの製品のコンサルティングを手がける複数の企業を買収している。またIBMは、ハイブリッド型マルチクラウド事業に専念するために、マネージドインフラサービス部門を新たな株式公開企業としてスピンオフすると発表している。
ここでの大きな疑問は、同社がクラウドのコントロールプレーンになれるかどうかというものだ。筆者の当座の意見は、同社がマルチクラウドマネージャーになる可能性は高いというものだ。以下にその理由を挙げる。
- IBMは長年にわたり、グローバルサービスを展開してきているとともに、競合他社も含むマルチベンダーからのテクノロジーを実装する能力を備えている。また同社は、かなり以前から中立の立場でサービスを提供してきており、その戦略は大企業でのマルチクラウド使用というトレンドが続く中で実を結ぶはずだ。
- Red Hatを買収したことで、IBMはオープンソースシステムを用いて社内データセンターとハイブリッドクラウドを管理するプラットフォームを手に入れている。大企業は自社インフラの管理と、ハイパースケールクラウドの管理を、長年にわたる実績があるベンダーに任せたいと考えるようになってきているようだ。
- ハイパースケールクラウドプロバイダーは自社のみで適切なインテグレーションを実現できる可能性が低いため、顧客との間を仲介する信頼できるベンダーを必要としている。こうした役割は以前からIBMのほか、Accentureといった企業によって担われてきている。
- IBMは、テクノロジー分野における投資の流れを追いかけている。Flexeraが最近実施した調査によると、企業はAWSやAzure、GCPに対する支出を増やしている一方、IBMを含む従来型の大企業向けベンダーに対する支出を減らしているという。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。