本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回は、医療系スタートアップのUbieが1年間無償で提供する「AI問診ユビー for クリニック」を取り上げる。
スタートアップのUbieとは? AI問診サービスとは?
ヘルステックスタートアップのUbieはこのほど、医療機関の紙の問診票の代わりにタブレットを活用した問診サービス「AI問診ユビー for クリニック」を全国のクリニック(かかりつけ医)に向けて利用料1年分無償で提供開始すると発表した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急対策で、1月8日から2月26日までの契約を条件に、利用開始日から1年間が無償期間となる。なお、タブレット購入費、電子カルテ連携費、通信費などの実費は、医療機関による負担となる。
Ubie共同の創業者で代表取締役を務める医師の阿部吉倫氏(左)とエンジニアの久保恒太氏
2017年5月に医師とエンジニアが共同で創業したUbieは、「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」ことを目指し、医療機関、医師の負担を減らすとともに、人々が適切な医療へのかかり方の選択を支援するAIシステムを開発し提供している。
サービスとしては、医療機関向けの「AI問診ユビ―」と生活者向けの「AI受信相談ユビ―」を提供しており、現在、AI問診ユビ―は全国41都道府県の医療機関200カ所で導入、AI受信相談ユビ―は月間40万人が利用しているという。(図1)
図1:2つのサービスの概要(出典:Ubie)
今回のAI問診ユビー for クリニックは、かかりつけ医であるクリニック向けに1年間無償提供の形でパッケージ化したサービスである。
具体的には、患者が診察前の待ち時間にタブレットを使って症状を入力すると、医師が用いる電子カルテに、専門的な文章に翻訳された問診内容と病名辞書が即時に表示されることから、事務作業を大幅に削減できる。
また、医師やスタッフの業務効率化に加えて、患者の滞在時間の短縮により院内感染リスクを低減できるとともに、医療機関の公式ホームページ上に来院前問診機能を搭載すると、患者が自身のスマートフォンやPCを用いて自宅で回答した内容をあらかじめ聴取した状態で診察することもできる。
発熱をはじめ新型コロナウイルス感染症に関連する症状の有無により、患者がかかるべき受診先は異なる。特にこの症状の有無に基づいた判断や対応によってクリニックの負担が増加しているのが現状だ。今回のサービスの来院前問診機能によって、症状を事前聴取した上で各医療機関の適切な対応を支援し、これにより患者側もスムーズに医療へアクセスできるようになるとしている。
今回のサービスを導入希望のクリニックは、専用ページ内のフォームから申し込むことができる。