海外コメンタリー

注目されるマルチクラウドの今を知る

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2020-12-18 06:30

 組織がそれぞれデジタル変革に乗り出し、自らの業務プロセスのモダナイズやITインフラの最適化に取り組む中、クラウドコンピューティングサービスが自動化やオーケストレーション、データアナリティクスとともにより重要になっていくのは明らかだ。

 こうしたトレンドは本格化しつつある。例を挙げると、F5 Networksが2月に公開した「2020 State of Application Services Report」(2020年版アプリケーションサービスの状況レポート)によると、2020年末までに自社のアプリケーションの過半数がクラウド上で稼働するようになると答えた回答者は3分の1近くにのぼっている。今なお続いている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによって、こうしたクラウド移行プロセスが加速されるのは間違いない。

 しかし、F5のレポートに詳しく記されているように、企業のアプリケーションポートフォリオはたいていの場合、ウェブアプリやモバイルアプリにおける3階層アーキテクチャー(40%)や、クライアントサーバーアーキテクチャー(34%)、マイクロサービス/クラウドネイティブアーキテクチャー(15%)、従来型のメインフレーム/モノリシックアーキテクチャー(11%)といった主要なアーキテクチャーを含め、さまざまなものが混在している。これは、企業が利用しているアプリケーションの種類によってクラウド移行の詳細が(内部的にも外部的にも)大きく異なることを意味している。

 これらの回答を掘り下げた結果、ほとんどの企業(76%)が従来型のアーキテクチャー(3階層やクライアントサーバー、モノリシック)と近代的なアーキテクチャー(モバイルやマイクロサービス)を組み合わせて用いている一方、21%は従来型のアーキテクチャーのみを使用しており、近代的なアーキテクチャーのみを使用しているのは3%にとどまっていることが明らかになったという。なお、18%は5つのアーキテクチャーすべてを使用しているとしており、11%は1種類のみを使用していると答えている。F5の調査は2019年に実施され、世界のさまざまな業界、企業規模の組織でさまざまな役割に就く2600人から回答を得ている。

F5 The State of the Enterprise App Portfolio
提供:F5 Networks

 「どのようにして自社のアプリケーションに最適なクラウドの形態を決定するのか」という質問で、最も多かった回答は「アプリケーションごとのケースバイケース」だった。その理由はアプリのポートフォリオがさまざまに混じり合っているところにある。こういった混在は、回答者の4分の3が複数のクラウドプロバイダーを利用していると答えている理由や、回答者の3分の1以上がレガシーアプリケーションをリファクタリングし、近代的な環境で動作できるようにすることがデジタル変革の最優先事項だと答えている理由ともなっている。

 F5は、一般的な組織のポートフォリオにさまざまなアプリケーションアーキテクチャーが混在している結果、「長い目で見てマルチクラウドが一般的になっていくという事実が浮き彫りになっている」と記している。

 筆者が2019年に執筆した記事では、複数の調査の結果を参考に、マルチクラウド環境を取り巻く問題を概説している。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]