クラウドコンピューティングは大企業や中小企業、新興企業を問わず普及が進んでいる。しかし、企業はどの程度までクラウドの採用を進めるべきなのだろうか?また、パブリッククラウドやプライベードクラウド、ハイブリッドクラウドを用いてどのようにワークロードを配備すべきなのだろうか?さらに、複数のクラウドプロバイダーを(パブリックであるかプライベートであるかにかかわらず)利用する場合、どのプロバイダーを選択すべきであり、自社にとってのメリットを最大限に引き出すにはどのように管理すればよいのだろうか?
「マルチクラウド」という言葉と「ハイブリッドクラウド」という言葉は混同されるきらいがあるため、ここで両者の違いを明確にしておきたい。「ハイブリッドクラウド」はもともと、プライベートインフラ(オンプレミス環境もしくはコロケーション施設にホストされている環境)とパブリッククラウドインフラを組み合わせたうえで、オーケストレーションツールを用いて、例えばパブリッククラウドのリソースをコンピュートおよび/あるいはストレージに対する通常の要求、もしくは一時的に高まった要求に回せるよう、ワークロードの配備や両インフラ間のバランスを管理するようなクラウドを意味していた。
一方、「マルチクラウド」は戦略的な観点をより重視しており、企業がどのようにして複数のクラウドプロバイダーを使いこなし、技術上あるいは業務上のさまざまな要件を満たしていくのかが焦点となっている。また、最もきめ細かいマルチクラウドの定義としては、さまざまなクラウドプロバイダーのコンポーネントサービスを用いたマイクロサービスやコンテナによって構築されたクラウドネイティブなアプリケーションとなっている。
マルチクラウド戦略は実際のところ、どの程度広く採用されているのだろうか?
アナリスト企業Forrester ResearchがVirtustreamの依頼を受け、米国とEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)、APAC(アジア太平洋地域)におけるクラウド戦略やアプリケーション管理の意思決定者727人を対象として実施した2018年7月の調査によると、回答者の86%が自社の戦略を「マルチクラウド」であると位置付けている。そのなかで最も多かった回答は「さまざまなアプリケーションワークロードのために複数のパブリッククラウドおよびプライベートクラウドを使用している」というものだった。

提供:Forrester Research/Virtustream
同調査で明らかになったマルチクラウドの用途としては、さまざまなアプリケーションワークロードのために複数のパブリッククラウドとプライベートクラウドを使用しているという上述の回答(32%)のほかに、従来型の非クラウドシステムと並行するかたちでパブリッククラウドを使用しているという回答(23%)や、さまざまなワークロードのために複数のパブリッククラウドを同時に使用しているという回答(14%)などがあった。