武田薬品工業(武田薬品)とPwCコンサルティングは、クローン病のデジタルツインシミュレーションツールを用いた取り組みを開始すると発表した。クローン病とは、消化管の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす疾患。この取り組みでは、PwCの人体モデリングシミュレーション技術「Bodylogical」が活用されている。
Bodylogicalでは、人体のさまざまな生理機能を数字で表し、サイバー空間上に臨床症状や投薬情報を用いてデジタルツインを作成することで、個人に合わせたさまざまな治療シナリオをシミュレーションする。
同技術を活用したシミュレーションツール「MSLアプリ」はタブレットで操作でき、消化器疾患専門医と武田薬品のメディカルサイエンスリエゾン(販売促進を目的とせず、社外医科学専門家との情報交換で新しい治療法や最適な治療を普及させる職種:MSL)が科学的議論を実施する際に限定的に使用される。
MSLアプリは、異なる疾患歴や疾患状態を持つ仮想の患者集団から一人の仮想患者を選択し、さまざまな治療成果をシミュレーションすることで、ペイシェントジャーニー(疾患の認識から診断、治療、その後の生活までの道のり)への理解を深めることが可能になるという。シミュレーション結果には内視鏡CG画像も含まれ、視覚的に状態を理解することができる。
両社は、学術論文などのデータや武田薬品の臨床試験データを活用してMSLアプリのモデルを調整するとともに、患者のデータを用いて精度を検証する。そして、モデルの開発や検証に関する学術論文の掲載に向けて準備を進めている。
Bodylogicalの検証に携わった北里大学北里研究所病院の小林拓特任准教授は、「治療の選択肢が拡がったことにより、臨床現場では『目の前の患者にとってベストな治療をどうやって選ぶか』ということが課題となっている。今回の取り組みは、この課題を解決して選択肢の増加や治療の進歩を患者に還元するための重要な一歩となる」と述べる。