最高情報責任者(CIO)は上司から期待されるようになっている。IT業界を専門とする調査会社のGartnerは、取締役会や最高経営責任者(CEO)は、事業の成果と直接結びつく技術への投資に以前よりも前のめりになっていると述べている。同社によれば、2021年の世界のIT支出は前年比8.6%増の4兆2000億ドル(約440兆円)に達する見込みだという。今後取締役会からもっとも期待され、もっとも多くの資金が投じられるのは、短時間で成果を挙げられるデジタルビジネスプロジェクトだろう。
そうしたプロジェクトに資金が投じられれば、CIOの優先順位も変わらざるを得ない。ポストコロナ時代のCIOは、インフラに関する問題に集中するだけでは済まず、取締役会のITに対する関心の高まりに応え、デジタル化とデータで企業の成長にどう貢献できるかを見極めることが重要になるだろう。
KFC Globalの最高デジタル・技術責任者のNitin Chaturvedi氏は、「私の感触では、従来のCIOの役割はインフラやセキュリティを中心とした技術者としての意味合いが強く、基本的に費用対効果の高いテクノロジーを提供することが求められていた」と話す。
「しかしこれからのCIOには、成長に寄与する技術や、デジタル化された製品に関する仕事を重視した役割が求められるようになる。単なる変化の受け手ではなく、組織全体のチェンジエージェントとしての役割が強くなっていくだろう」
CIOはこれまで、組織のために、強固なデジタル基盤を構築してきた。Gartnerは、企業の経営陣は現在の状況を好ましく思っており、ITに対して、今後の成長を支えるようなより高価値で戦略的な取り組みを求めていると述べている。このトレンドは、CIOが事業部門に貢献すればするほど、事業部門からの要求が強まることを示しているという。
CIOが今為すべきことは明らかで、これまで以上に、テクノロジーの力を売り込んでいくべきだ。ただし、取締役会がテクノロジーに関心を寄せているとはいえ、ITリーダーは、事業部門のリーダーを細かい技術的な話で混乱させるようなことがないように注意する必要がある。
たばこ会社であるPhilip Morris International(PMI)の最高デジタル・情報責任者Michael Voegele氏は、事業部門のリーダーは、必ずしもシステムやサービスの技術的な詳細について聞きたいわけではないと話す。彼らが求めているのは、技術的なイノベーションがビジネスの成果にどんな価値をもたらしてくれるかという話だ。