Googleは、年次カンファレンス「Google Cloud Next '21」で、「分散クラウド」を実現するための新たなポートフォリオ「Google Distributed Cloud」を発表した。ハードウェアとソフトウェアで構成されたこのポートフォリオによって、ネットワークエッジや顧客のデータセンターにまでクラウドインフラを拡張できるようになるとしている。
この新たなポートフォリオは、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、プライベートクラウドの分野で「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」(AWS)を追いかけるGoogleのクラウドコンピューティング基盤上に構築されている。「Google Distributed Cloud Edge」と「Google Distributed Cloud Hosted」という2つのサービスが用意されている。
Google Distributed Cloudは同社の「Anthos」システム上に構築されており、「Google Cloud」上のハードウェアや仮想マシン(VM)のほか、オンプレミス環境のハードウェア、競合クラウド上のVM、機械学習(ML)処理を実行しているエッジデバイスの管理をシンプルにすることを目的としている。
このサービスは、Google Cloudの「世界規模のインフラ」を基盤にしてデジタル変革を推進している企業を対象にしている。顧客やエッジのロケーションでGoogleによって管理されるハードウェアで稼働するAnthosは、アプリケーションをセキュアにリモートで実行するためのサービスプラットフォームを提供する。顧客がデータにアクセスするニーズのある高速なアプリを必要としているビジネスアプリケーションをアップグレードする上で有用となるはずだ。
Googleは同社のブログで、「Google Distributed Cloudを用いることで、顧客はアプリケーションの移行やモダナイズが可能になるとともに、データベースやML、データアナリティクス、コンテナー管理を含むGoogle Cloudのサービスを用いてデータをローカル環境で処理できるようになる」としている。
Google Distributed Cloudは、Cisco SystemsやDell、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、NetAppによるサポートを得ている。
調査会社Canalysによれば、2021年第1四半期の企業のクラウドインフラサービス支出は前年比35%増の418億ドル(約4兆6000億円)に達した。市場シェアの首位はAWSで32%、2位以下にMicrosoft Azure(19%)、Google Cloud(7%)が続いた。
Googleのクラウド事業は急速に成長している。2021年第2四半期の売上高は46億3000万ドルで、前年同期から54%増加した。
Google Distributed Cloud Edgeはフルマネージドサービスで、Google Cloudのインフラとサービスを顧客とその顧客の環境に近い場所にもたらす。
この製品により、顧客はエッジで5Gや無線ネットワークの機能を利用し、エッジデバイスにコンピュータービジョン用のアプリケーションを配備できるようになるため、小売業や製造業での在庫や供給の管理に活用できるはずだ。
Google Distributed Cloud Edgeは同社の通信業界向けソリューションを基盤に構築されており、CSPがIntelやNVIDIAのテクノロジーでワークロードを実行し、新しい5Gやエッジのユースケースを提供できるようにする。また、EricssonとNokiaがエッジネットワークの5G展開でサポートする。
Google Distributed Cloud Hostedは機密のワークロードなどを稼働させることを目的とし、デジタル主権のビジョンに基づいて構築されている。データレジデンシー(データの保管場所)、セキュリティ、プライバシー要件が厳しい公共部門の顧客や組織をサポートする。欧州連合(EU)が推進するデジタル主権の確立に向け、欧州の顧客が対応できるようなインフラを構築する狙いがある。欧州委員会(EC)は米国の「海外データ合法的使用明確化法」(CLOUD Act)といった、EUの「EU一般データ保護規則」(GDPR)との整合性を有していない米国法に関する懸念を示している。
Googleは、「Google Distributed Cloud Hostedは、インフラやサービス、API、ツールの管理のいずれの時点でもGoogle Cloudへの接続を要求せず、運用においてはAnthosによるローカルコントロールプレーンを利用している。Google Distributed Cloud Hostedは2022年前半にプレビュー版が利用可能になる」としている。
Googleは9月、ドイツのT-Systemsと連携し、Google Cloud Platformを「欧州の条件で」ドイツの顧客に提供すると発表した。T-SystemsやフランスのOVHcloudが、「欧州で求められる条件に即したクラウド」イニシアチブの一環として、パートナーとなっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。