山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

死後のデータをどう扱うべきか--中国のネットユーザーがデジタル遺産で論議

山谷剛史

2022-03-24 07:00

 2021年の話だが、中国ネット界隈の一部で死後の「データ」、いわゆるデジタル遺産が話題になった。デジタル遺産というと、電子マネーや仮想通貨、デジタル化された金融資産などが挙げられるが、ここではネット交流サイト(SNS)アカウントなどの個人情報を、ユーザーの死後どのように扱うべきか考察する。

 例えば、Appleは「iOS 15.2」に「デジタル遺産」機能を追加した。これはユーザーの死後、iCloud上の特定のアカウントデータにアクセスできる人を5人まで設定できるサービスになる。同社が2021年6月に開催の開発者向けイベント「WWDC 2021」で発表すると、騰訊(テンセント)は後を追うように、同社のユーザーが死亡した際にデジタル資産を引き継げると表明した。

 このタイミングでデジタル遺産に注目が集まった。中国版Twitterとも呼ばれている「微博」(ウェイボー)では、次のようなアンケートを実施してネットユーザーから回答を得ている。

  • 「亡くなった仲の良いアカウントのデジタル遺産(ログ)を残すか」--「残す」が79.5%、「消す」が20.5%
  • 「いざという時にあなたのアカウントを別の人に譲れるか」--「譲れる」が2512票、「譲れない」が7669票
  • 「あなたの死後、家族にプライバシーを見せてもいいか」--「見せたい」が16.8%、「見せたくない」が83.2%
  • 「あなたの死後、サービス運営事業者にアカウントを処理する権利があると思うか」--「ある」が5.2%、「ない」が94.8%

 回答結果を見てみると、「デジタル遺産は重視しているし、自分の人生をデータとして残したい」というのが多数派のようだ。しかし、「プライバシーの問題を考えると自分の情報は見せたくない」という姿勢も見てとれる。

 では、どのようなデータを見せてよい/見せてはいけないと考えているのだろうか。「死後に見られたくないデータは?」という質問には「閲覧記録」(27.3%)、「ショートメール」(16.4%)、「アクセス記録」(13.7%)、「購入記録」(12.1%)とプライバシーに関する項目が続く。

 一方で、「ファイル」「アプリデータ」「写真」「音声」などの回答はそれぞれ1%前後と、ごくわずかであり、SNSを公開したままにするのをためらう中国人は少ないと解釈できる。

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