クラウドは今日、あらゆる物事に関わっている。しかし2010年の段階では、現実的とは言い難いものだった。それでも米航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究センターとRackspace(現Rackspace Technology)の開発者は、クラウドを構築する最善の方法がオープンソースソフトウェアを基盤にすることだと判断した。彼らは協力し、2012年頃までに「OpenStack」という大規模オープンソースIaaSクラウドを作り上げた。それから約10年を数えた米国時間3月30日、OpenStackは25回目のリリースとなる「Yoga」の公開を発表した。
OpenStackは現在、OpenInfra Foundation(旧OpenStack Foundation)が管理している。OpenStackもクラウド戦争に巻き込まれるようになったと考えている人もいるかもしれないが、実施には静かに成功の道のりを歩んでいる。OpenInfra Foundationによると、11月時点でOpenStackが管理するコアは前年比で66%増加しており、2500万を超える本番環境のCPUコアを管理している。特に通信業界でOpenStackは重要な存在となった。Bloomberg、Walmart、Workday、米Yahooなど大手がOpenStackを利用している。
OpenStackはますます重要になっている。実際のところOpenInfra Foundationの最高執行責任者(COO)Mark Collier氏は、「われわれは1年で1000万のコアを追加した。これは前年比で見ると最大の増加だと私は考えている。素晴らしい。過去1年だけで100のクラウドが新たに構築された。現在では100万を超えるコアを稼働させている組織が7つある」と述べている。
OpenStackの成功が続く理由の1つとして、IaaSクラウド上で必要となるほとんどすべてのものを実行できるという点が挙げられる。ベアメタル、仮想マシン(VM)、GPU、コンテナーなどだ。また、「Kubernetes」や「Prometheus」といった今や必要不可欠となっているクラウドネイティブなソフトウェアも統合されている。
Yogaの強みとして、NVIDIAのスマートNIC(SmartNIC)やDPUといった先進的ハードウェアのサポートがある。NVIDIAは現在、OpenStackとともに、暗号化/復号機能や、ファイアウォール、パケット検査、ルーティング、ストレージネットワークといった機能を、OpenStackの配備上でより高速に動作させるための取り組みを進めている。
具体的な成果を挙げると、OpenStackのサービスとしてのネットワーキングである「OpenStack Neutron」がリモート管理型の仮想NICタイプをサポートするようになり、SmartNIC DPUへのポートバインディングが可能になっている。また、コンピュートプログラムの「OpenStack Nova」が、コントロールプレーンをホストサーバーからオフロードするために、SmartNICを活用するネットワークバックエンドをサポートするようになった。ホストサーバーからコントロールプレーンを除去することでセキュリティが強化されるとともに、モダンなSmartNIC DPU上のCPUリソースとRAMリソースを活用することでオーバーヘッドの低減が可能になった。
また、SmartNIC DPUを搭載したNeutronは、大規模なネットワークに対応した高性能なLocal IP(ローカルIP)をサポートするようになった。ローカルIPは、複数のポートやVMをまたがって共有できる仮想IPだ。さらに、これはプライベートなIPアドレスともなっている。
このほか「Manila」ファイルシステムがソフトデリートをサポートするようになった。さらにYogaでは、PrometheusとKubernetes向けに互換性も向上している。
そして、OpenStackは今後、リリースサイクルを変更する。最近まで、年に2回のペースでリリースされていた。しかし、1年に2回のアップデート作業を避けたいと考えている運営者らは、より余裕のあるアップグレードサイクルを求めていた。このため2023年からOpenStackは「tick-tock」方式を採用する。すなわち年に2回のリリースのうち、一方はメジャーリリースとなり、他方はマイナーリリースとなる。
OpenStack Yogaは現在、ダウンロード可能になっている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。