SUSEは何年にもわたり、欧州を拠点とするビジネス向けLinux製品を提供するオープンソース企業であるとともに、「OpenStack」を提供する大手IaaS企業という地位を保っていた。そのSUSEが「SUSE OpenStack Cloud」の新バージョンの開発を停止し、販売を終了すると発表した。
同社はわずか数カ月前に「SUSE OpenStack Cloud 9」をリリースしたばかりだ。同バージョンは「OpenStack Rocky」と「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)12 SP4」をベースにしている。またこれは、Hewlett Packard Enterprise(HPE)の「HPE Helion OpenStack」を統合した最初の製品でもある。SUSEは3年ほど前に、HPEのOpenStackと「Cloud Foundry」関連の資産を買収している。
SUSEは、業界のテクノロジートレンドに歩調を合わせるために、そして最も重要なこととして顧客のニーズに応えるために、戦略的投資をアプリケーション配信市場とその機会に集中させるとともに、増やしていくと説明している。SUSEは「Kubernetes」ベースのアプリケーション配信製品である「SUSE Cloud Application Platform」や、「SUSE CaaS Platform」への取り組みを強化していくようだ。また、「テクノロジーを目的とする将来的な買収」もあり得るとしている。
SUSEのビジネス開発および戦略的提携担当プレジデントであるMichael Miller氏は、電子メールで「SUSEは業界のテクノロジートレンドに歩調を合わせるために、また最も重要なこととして顧客のニーズに応えるために、戦略的投資をアプリケーション配信市場とその機会に集中させ、そして増やしていく。こうした針路調整により、SUSEは顧客のニーズや戦略的な方向性、市場機会により沿うようなかたちでリソースを割り当てられるようになる。こうした面にさらに注力することで、成長とイノベーションというエキサイティングな目的に向けて未来に目を注ぐ、独立系オープンソース企業としてのSUSEの勢いを増していけるようになる」と述べている。
また、SUSEの既存OpenStack顧客に関しては、「影響を受けるすべての顧客やパートナーと緊密に連携し、現サブスクリプション期間の終了まで、そして代替サービスへの移行に際してサポートを続ける」としている。
SUSEと同様に、初期の頃からOpenStackを手がけてきたMirantisの共同創業者で最高マーケティング責任者(CMO)のBoris Renski氏は、「OpenStackの持つ業務上のメリットを認めているすべての顧客に対して、Mirantisはその移行を支援する用意ができている」と述べ、「SUSEはOpenStackコミュニティーにおいて長きにわたって、活気ある、そしてリソースに富んだ仲間であり続けてきた。彼らの貢献とリーダーシップがなくなるのは残念だ」と付け加えている。
SUSEは、同社のエンタープライズ向けLinuxサーバー製品「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)や、Cephベースのソフトウェア定義ストレージプログラム「SUSE Enterprise Storage」に対するコミットメントを維持、発展させていくとしている。
SUSEは7月にCEOの交代を発表した。SAPのCOO(最高執行責任者)を務めていたMelissa Di Donato氏が新CEOに就任している。
The OpenStack FoundationのCOOであるMark Collier氏は現実的な見方をしているようだ。同氏は電子メールで、「OpenStackディストリビューションの市場は、Linuxをはじめとする大規模オープンソースプロジェクトの場合と同様、高い支持を得て広く普及している主要企業で占められるようになってきている。あらゆる企業はその時々で戦略的優先順位を調整している。また、プライベートクラウド内のコンテナや、仮想マシン(VM)、ベアメタル向けのオープンソースインフラ製品の提供に注力し続けるこれらディストリビューションプロバイダーにとって、OpenStackは市場で一番の選択肢となっている」と述べている。Collier氏は、SUSEがOpenStackのエコシステムから離れることは、OpenStackが問題を抱えていることを示す兆候だとはみていないようだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。