クラウド人事労務ソフト「SmartHR」を提供するSmartHRは3月14日、事業戦略発表会を開催した。今後の事業戦略では「マルチプロダクト戦略」がキーワードになるという。
倉橋隆文氏
SmartHRは労務業務を効率化するサービスとして2015年にローンチされたが、タレントマネジメントシステムとしても進化していると取締役COOの倉橋隆文氏は紹介。タレントマネジメント機能としては、従業員の人事評価をシステム上で完結する「人事評価」、シンプルなユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス(UI/UX)で従業員データを表示する「分析レポート」、従業員へのサーベイを簡単に実施する「従業員サーベイ」、2月にリリースされた「配置シミュレーション」が用意されている。配置シミュレーションは、従業員の顔写真を動かすことで異動のシミュレーションを可能にする。
労務管理に加えてタレントマネジメント機能を搭載することで、従業員の採用・入社から退職に至るまでのさまざまな場面で人事担当者や従業員の業務を効率化する。これは、SmartHRに「一通りの人事データ」が蓄積されるためで、そのデータを活用して組織開発や人員配置を可能にする。
人的資本経営が世界的に話題となっているが、日本では「働く人の数や全人口を占める働く人の割合が減っており、人がより貴重になっている」と倉橋氏は述べ、「企業も人を大事にし始めている。そのため、必要な人事データがそろうSmartHRを評価し、導入する企業が増えている」とアピールした。
SmartHRの実績としては、労務管理クラウド市場でのシュアは5年連続トップで、年々拡大しているという。倉橋氏は、労務管理クラウドの浸透率が3.1%という調査結果を挙げ、多くの日本企業が紙や手作業で労務管理をしていることから、市場の成長余地は依然大きいと説明する。
タレントマネジメント市場は労務管理市場と同等の200億円強の規模を持ち、急成長している。しかし、同市場においてSmartHRは後発だが、先行プレイヤーの有料顧客が1600〜3000社と言われる中、分析レポート、従業員サーベイ、人事評価がそれぞれ有料顧客数500社を超えている。「複数機能を同時に使っている企業も多いため、数字を単純に足し上げることはできないが、先行している主要プレイヤーに迫る勢いで急成長している」(倉橋氏)。
SmartHRは、登録社数が5万社を超えるとともに、クラウド型人事労務システムとしての満足度はトップだという。タレントマネジメントシステムとしても満足度は首位で99%以上の企業が継続利用していると倉橋氏は強調。導入企業の業界も小売や飲食をはじめとして多岐にわたるが、製造での導入が最近では目立っているという。
芹澤雅人氏
代表取締役CEOを務める芹澤雅人氏は、同社のミッションについて、「労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる」であり、それを一言で表したものが「well-working」と説明する。
well-workingを具体化するにあたり、企業活動を通して実現したいことは「働く人の無駄を省き、作業を効率化する」「働く人のポテンシャルを引き出し、エンゲージメントを高める」ことだと芹澤氏。労働環境における今後の変化として、労働人口の減少と働き方の多様化が起こると考えられることから、労務の効率化で「働きたいと思う環境の整備」を、タレントマネジメントで「選ばれる組織づくり」をサポートしたいという。
年間経常収益(ARR)は、2017年8月に1億円を超え、2022年4月には「T2D3」を達成している。「足元のARRは100億円を超え、契約獲得ベースだと約110億円」と芹澤氏。「世界的なSaaS企業と比較しても引けを取らない成長スピードと評価されている」(同氏)