対話型AI「ChatGPT」が話題だ。筆者も使ってみて「これは次のキラーアプリになる」と直感した。注目したいのは、業務でどれだけ使えるかだ。その観点で、対話型AIの業務利用にいち早く乗り出した2つの企業の動きに着目し、企業としてどのような姿勢で臨むべきかを考えてみたい。
GMOがグループ全体でChatGPTの業務活用を開始
2022年11月に公開されたChatGPTは、利用者の問いかけに対して、日本語も含めて自然な回答を返してくれる自然言語処理のAIによるチャットサービスだ。大量のテキストデータを学習し、文章の自動生成や自動翻訳など、さまざまな用途に利用されるとみられている。プログラムから利用できるAPIも用意されているので業務での活用も可能だ。イーロン・マスクが創業に関わり、Microsoftが出資したAI研究開発会社であるOpenAIが開発したことも話題を呼んだ。
ChatGPTに代表される対話型AIはさまざまな応用が期待される一方、回答内容の正確性や倫理面、さらには情報流出などセキュリティ面での問題が指摘されている。そうした懸念から業務利用には慎重な企業が少なくない中、GMOインターネットグループとパナソニックコネクトが全社で利用開始したことを表明した。企業として業務利用を積極的に推進すると明確に意思表示した格好だ。これは興味深い動きである。以下、両社の取り組みのポイントを紹介しておこう。
まず、GMOインターネットグループは3月10日に、ChatGPTの積極的な業務活用を開始したと発表した。グループ全体でChatGPTの活用を推奨し、業務効率化や新しいサービスの展開検証など、さまざまな場面で積極的に活用していく構えだ。
同グループではこの動きに先立ち、グループ従業員に対してChatGPTの利用実態について2月下旬に調査した。その結果、73.5%がChatGPTを認知しており、およそ40%が使った経験があることが分かった。業務に活用しているとの回答はこの調査段階で6.3%だったものの、この結果を踏まえて本格的な業務活用に向け、グループ全体として推進することにしたという(図1)。
図1:GMOインターネットグループでのChatGPT利用状況(出典:GMOインターネットグループの発表資料)
同グループでは、ウェブ版のChatGPTについては入力データを学習するため、機密情報や個人情報を含んだ業務には利用していないものの、データを学習しないAPI版を利用するなど、全ての業務での活用を図っていく構えだ。なお、ウェブ版については処理スピードなどを考慮し、有料版の使用を推奨しているという。
具体的な活用法としては、業務プロセスの改善を目的にグループ各社でさまざまな検証を進めている中で、例えば、文章作成時のタイトルやキャッチコピーのアイデア出し、文章の要約やトーン&マナーの変更、Excel関数の構築、プログラムの生成やデバッグなどを挙げている。
また、ChatGPTはインターネット検索にも大きな影響を与える可能性があるため、より良いサービスを提供するためには従来の検索エンジン最適化(SEO)対策に代わる新しい考え方が必要となることから、それに対応するための研究も進めている。
一方で、ChatGPTをはじめとするAIを活用するに当たり、AI倫理規定を順守するとともに、データの取り扱いにも細心の注意を払いながら、同グループにおける使用ルールの整備を進めている。情報を扱う従業員についても情報を適切に取り扱うための情報リテラシー研修などを実施し、意識レベルを向上させることで、企業全体で適切な活用を進めていく構えだ。
さらに、同グループでは従業員全員の業務活用を推進するために、「ChatGPT業務活用コンテスト」の開催を決定。賞金総額を1000万円とし、新たなアイデアや革新的な活用事例をグループ内から募集し、従業員全員で優勝者・チームを決めるとのことだ。ChatGPTの業務活用に向けて本気度が伝わってくる取り組みである。