職務内容に応じて人材を配置し活用するジョブ型人事制度を導入する企業が増えている中で、懸念されるのはそうした人材を上司であるマネージャーがしっかりと評価できるのかだ。パナソニックコネクトの新たな取り組みを見ながら筆者なりに考えてみた。
パナソニック コネクトが「対話重視の評価制度」へ
「今回の新たな取り組みはマネージャーの力量向上が最大のポイントだ」
パナソニック コネクトの執行役員 常務・最高人事責任者(CHRO) 兼 人事総務本部長で最高健康責任者も務める新家伸浩氏は、同社が2023年4月から全社員に導入するジョブ型人事制度について先頃開いた記者説明会でこう強調した(写真1)。
写真1:パナソニック コネクト CHROの新家伸浩氏
会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、本稿では新家氏の上記の発言に注目し、ジョブ型人事で上司と部下の評価方法はどうあるべきかを筆者なりに考えてみた。
「今回の新たな取り組み」とはジョブ型人事制度を指すが、「マネージャーの力量向上が最大のポイント」とはどういうことか。それは、マネージャーがジョブ型人材である部下の評価について、対話を重視して的確に判断するマネジメント能力を発揮できるかが、新人事制度を定着させる最大のカギになるという意味だ。
今回の取り組みにおける「マネージャーによる部下の評価」について、新家氏は次のように説明した。
「最大の特徴は、現場のマネージャーが部下の評価およびそれに伴う報酬を決定するということだ。従来は、評価記号と一律の支給テーブル方式によって個々の社員の報酬が決まっていたが、それでは社員からすると、例えば『AA』(ダブルA)と高評価だったとしても何が良かったのか明確に伝わらない面があった。一方で、ネガティブなフィードバックも返ってこないところがあった」
「そこで、現場のマネージャーに権限を持たせた上で『対話重視の評価制度』を掲げる形にした。これは、当社がかねて取り組んできたカルチャー改革の一環として『1on1』(ワンオンワン)での対話方式を導入し、定着して社員の満足度も上がってきていることを踏まえたものだ」
そして同氏は図1を示しながら、「期初にはJD(ジョブディスクリプション:職務記述書)を参考に目標を設定し、期中は1on1で対話を重ね、期末においては上司がしっかりと説明責任を持って部下に自らの評価を伝え、それに基づいて報酬額を決定して提示する。こうした過程において上司と部下の間のコミュニケーションを密にし、評価の満足度を高めていこうと考えている」と、評価の流れについて説明した。
図1:対話重視の評価の仕方とは(出典:パナソニック コネクトの会見資料)