パナソニック コネクトと横浜市は、第5世代移動体通信システム(5G)などの無線通信ネットワークに60GHz帯のミリ波無線LANとセンシング技術を組み合わせた自動運転向け「Beyond 5G」ネットワークの実証実験を開始した。
横浜市は、「IoTオープンイノベーションパートナーズ」(I・TOP横浜)を通じた実証実験支援を行うことで、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などの先端技術を活用した生産性向上や社会課題の解決への貢献、新たなビジネスモデルの創出に取り組んでいる。今回、I・TOP横浜の取り組みとして、パナソニック コネクトが開発した同技術の実証実験を2022年12月19~23日の5日間にわたり、「臨港パーク」の管理用通路と周辺スペースで行う。
パナソニック コネクトによると、5Gネットワークは面的なサービスを提供できる一方で、電波の到達範囲が限定的なため多数の基地局を必要とし、結果的に多くのエネルギー消費を必要とするという課題がある。これに対し、今回の実証に利用するミリ波無線LANは、干渉源となる他の無線局が比較的少ない60GHz帯を用いており、ギガビット級のスループットを高安定に伝送できるとともに、5Gネットワークに比べ、低消費電力であることからエネルギー効率に優れているという。
しかしながら、ミリ波は直進性が高く、遮蔽(しゃへい)環境での使用が難しいことから、従来はスポット的なサービスでの利用が中心だったが、面的なサービスやモビリティー用途に適用するための技術開発が必要となる。
こうした課題に対し、ミリ波無線LANを5Gネットワークに導入することでネットワーク全体のエネルギー効率を3倍以上に高めることが可能になる。さらに、センシング技術により検知される未来の遮蔽環境に対し、パナソニック コネクトが開発した無線品質予測技術を用いて最適なタイミングで5Gネットワークに切り替え、途切れず通信できることを実証する。なお、実験では5GネットワークをWi-Fiで代用している。
システム構成図(出典:パナソニック コネクト)
実証実験時は、停車させた大型車両で伝搬路の遮蔽エリアを構築し、センシング情報を基に遮蔽エリアを予測し、伝搬路をミリ波無線LANから5Gネットワークに切り替える。パナソニック コネクトによると、センシング技術(実験では79GHz帯ミリ波レーダーを使用)による物体検知と無線品質予測技術により遮蔽環境を事前に予測し、途切れずデータ伝送を持続する実証実験は世界初の取り組みという。
自動運転車や自走ロボットの遠隔監視に用いる映像情報のリアルタイム共有や高精度動的地図などの大容量データの送受信を、既存の5Gネットワークにミリ波無線LANを導入して途切れることなく通信制御できるようになれば、自動運転を支える無線ネットワークシステムの消費電力を大幅に効率化できると期待を寄せる。
パナソニック コネクトでは、今回の実証実験を通じ、社会実装に向けた課題の抽出と、さらなる機能の改善に取り組んでいく。