日立製作所は10月30~31日にイベント「日立イノベーションフォーラム 2013」を開催した。情報活用がリードするビジネスと社会」をテーマの1つとして掲げ、31日には「ビッグデータの可能性と期待」と題されたパネルディスカッションが開かれた。ビッグデータをとりまくマーケティングの課題からITや法制度の現状などが議論された。
パネルディスカッションには、博報堂の山之口援氏(エンゲージメント・ビジネス・ユニット マーケティングプラットフォームソリューション部 部長)と弁護士の森亮二氏(弁護士法人英知法律事務所)、日立の赤津雅晴氏(横浜研究所 情報サービス研究センタ センタ長)が参加。モデレータは日立の安田誠氏(情報・通信システムグループ 情報・通信システム社 サービスプロデュース統括本部 副統括本部長)が務めた。
博報堂と日立は2012年からビッグデータ活用で事業を提携。山之口氏はビッグデータを活用したマーケティングでどんな政策ができるかを話した。山之口氏によると、マーケティング部がデータを活用する上での代表的な課題として「蓄積された顧客データが十分に活用されない」「市場動向や顧客ニーズの把握に時間がかかる」「マーケティング施策の効果がきちんと把握できていない」などがあるという。
スマートフォンやソーシャルメデイアなど、企業が収集可能な情報が増大している中、それらの情報をつなぎ、関連性を分析できるのがビッグデータによるアナリティクスの強みであるという見方を山之口氏は示した。これにより、「高精細データ分析に基づく個にむけたマーケティング活動」「データ解析時間の短縮による迅速な意志決定」「深く広いデータ活用による原因把握、経営指標管理」などビッグデータマーケティングの可能性を示した。
山之口氏はデータ分析をデータサイエンティストだけではなく、さまざまな部門の業務プロセスに組み入れることも重要とした。
顧客動線や店員位置、接客などの行動とPOSデータを総合分析
それでは、マーケティングに関して現在の技術でどのような効果を出せるのか――。日立の赤津氏は 情報サービス研究センターの赤津雅晴氏は顧客動線や店員位置、接客などの行動とPOSデータを総合分析することにより、従業員の最適配置を実現した例を紹介。「ここに店員を配置すると売り上げが伸びるという店舗内のポイントを割り出すことができる」と説明した。実際にこうした施策により、店舗全体の顧客単価が15%増加した事例もあるという。
ビッグデータについて今注目しておきたいのが、個人の情報をどこまで取り扱っていいのかという課題だ。弁護士の森氏は個人情報を取り扱う際の注意として「匿名情報であっても、復号できる環境にあったり、何かのデータと組み合わせて本人を特定できる状態であればプライバシー侵害につながる可能性がある」と指摘。さらに無料のウェブサービスが増えている現状について「個人情報の取得を条件に無料でサービスを展開している場合、有料化して消費者が自分の個人情報を提供するか否かを選べることが望ましい」とした。