NEC、社会インフラ整備などの「パブリック事業」で売上高7800億円目指す

齋藤公二 (インサイト)

2014-03-14 16:29

 NECは3月13日、社会インフラ整備を中心とする「パブリック事業」に関する説明会を開催。中長期的な取り組みとして“交通、水、通信、都市開発・工業団地、サイバーセキュリティ”という5つの領域に注力し、2015年度の売上高で2012年度比約1000億円増の7800億円を目指すことを明かした。

 パブリック事業は2016年3月末までの「2015中期経営計画」で経営資源の投入先として掲げた“社会ソリューション事業”を構成する4つの事業領域の1つ。パブリック事業のほか、エンタープライズ、スマートエネルギー、テレコムキャリアがあり、中期経営計画では、これら4つの合計で売上高3兆2000億円のうちの7割である2兆2100億円を目指している。パブリック事業は2012年で22%を占めており、2015年に約24%の構成比に引き上げる計画だ。

西村知典氏
NEC 執行役員常務 西村知典氏

 執行役員常務の西村知典氏によると、パブリック事業の売上高は大きく官公、公共、金融という3つの分野に分かれている。具体的なシステムやサービスとしては、自治体向けクラウドサービス、マイナンバー制度関連、防衛関連、生体認証、消防システム、航空管制、道路交通管制、ダム遠隔監視、デジタルテレビ放送用送信機、4Kリアルタイム圧縮などがある。

 「消防デジタル無線の特需やマイナンバー制度による投資、東京五輪開催に向けた社会インフラ投資など、国内ターゲット市場はCAGR(年平均成長率)で1.6%増の見込みだ。その中で2015年度に7800億円、営業利益率8%を目指す計画だ」(西村氏)

 交通についてはまず、航空管制レーダーを中心とした空港トータルソリューションを提供する。省エネ化、低価格化した航空管制レーダーが東南アジア諸国連合(ASEAN)各国で受注を拡大させており、これらに、鳥検知レーダー、顔認証セキュリティゲート、ブラジルのサッカースタジアムで構築したICTシステムのノウハウなどを組み合わせたトータルソリューションを展開するという。このほか、道路・鉄道領域での交通監視システムや準天頂衛星システムによる位置情報提供サービスといった事業を拡大する。

 水の領域では、振動センサや水圧センサを応用した漏水検知システムを活用し、ダムから水門までの遠隔監視、上下水道での漏水の早期検知など、水資源をトータルにマネジメントする仕組みを構築する。漏水検知システムは、水管に設置したセンサから漏水を検知するM2Mシステムだという。このほか、スマートウォーターマネジメントや下水道ロボット開発など、パートナーとの協業を推進していく。

 通信の領域では、災害に強い通信基盤を利用した防災システムを強化する。基地局がない場所で端末間で自動的にネットワークを構築する「アドホックネッワーク技術」、防衛や消防、自治体などが利用する異なる通信方式をソフトウェアで切り替え、相互通信を可能にする「ソフトウェア無線」技術などを活用し、いつでもどこでもつながる高信頼ネットワークを実現していく。人口衛星や緊急地震速報といった防災関連の資産を使って、ASEANなど新興国の防災や減災の対策にも力を入れる。

 都市開発・工業団地の領域では、「大規模プラントの故障予兆監視システム」の展開を拡大する。同システムは、センサ同士の相関関係から異常を検知する「インバリアント分析」技術を活用したシステムで、島根原発で検証を重ねてきたもの。

 発電所1基あたり3500のセンサを設置し、1秒間に100件取得されるセンサデータの相関関係を分析することで7時間前に故障を検知したケースもあったという。こうした技術を、エネルギー関連システムのほか、橋梁やトンネル、航空機・列車・船舶システム、製造プラント、データセンターなどに適用していく。

パブリック事業の領域 パブリック事業の領域(NEC提供)
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 サイバーセキュリティの領域では、5月末に「サイバーセキュリティ・ファクトリー」を開設し、官公庁や企業のサイバー攻撃対策を支援していく。2013年は、セーフティ事業をグローバルに展開するための拠点をシンガポールに設置し、サービス体系も「Safer Cities」として整備したほか、サイバーディフェンス研究所の株式取得、サイバーセキュリティ戦略室の設立、インフォセックの共同経営権取得など、体制作りを進めてきた。引き続きサイバーセキュテリィに向けた取り組みを強化する。

 中期経営計画では、国内での収益力強化に加え、グローバル事業の成長実現を掲げている。西村氏は「パブリック事業の海外売上高は現在およそ3%だが、これを15%まで引き上げたい」とした。競合他社との違いとしては、アドホックネッワーク技術のような無線システムに強みを持つこと、インバリアント分析技術のような新しい分析技術に強みを持つことなどを挙げた。

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