三国大洋のスクラップブック

米「中古iPhoneブーム」の光と影

三国大洋

2013-06-07 20:25

 アジアや中東、アフリカなどの新興国や一部の先進国市場でもiPhoneの人気が高まっている影響で、米国ではiPhone 4やiPhone 4Sの下取りを強化する動きが目立つ一方、この人気の高さが徒(あだ)となり、犯罪発生の大きな原因として社会問題化しつつあるらしい……今回はそんな話を簡単に紹介する。

家庭に眠る「90億ドルの埋蔵金」

 中古iPhoneの下取りというと、日本では比較的馴染みのあるもの--昨年秋のiPhone 5発売時には、携帯通信事業者が自ら積極的に施策を打ち出していたりもしたから、特に目新しいことでもないかと思う(註1)。

 米国では今年4月に、イメージ一新を図るT-Mobile USA(大手4社のなかで加入者、売上とも最も少ない。iPhoneを取り扱っていなかったことなどが災いし、長く契約者の減少が続いていた)がiPhoneの取り扱いを始めた際に、iPhone 5を購入する契約者に対して、それまで競合他社と契約して使っていたiPhone 4もしくはiPhone 4Sと交換でiPhone 5をタダで提供するという販促策を導入。この動きに追従する形で、5月半ばにはAT&TでもiPhone 4Sを下取りに出したiPhone 5購入者に最大で200ドルをキャッシュバックする、という対抗策を打ち出したという(註2)。

 新型iPhone(16Gバイト)の頭金が200ドルというのはしばらく前から定着している金額。つまり、200ドルのキャッシュバックがあればプラス・マイナス・ゼロで新型モデルに交換できるいうのが通信キャリア側から消費者への訴求点……ここまではかなり分かりやすい(何を今さら……という類の)話だが、ちょっと面白いのはそこから先の話で、2月上旬に出ていたBusiness Insiderの記事には次のような説明がある(註3)。

  • 消費者は頭金200ドルで新型iPhone(正味の小売価格は600ドル以上)を購入
  • 2年後に実質負担ゼロで新機種と交換
  • 業者側では、50ドル程度の費用をかけて下取りした製品を「再生」(データの削除や傷の処理、磨き直し、など)させた上で、250~300ドルでこれを卸売業者に転売
  • 卸売業者から海外に流れた製品は、新興国市場で350ドル程度で市販されることに

 なお、この話の情報源はGazelleという大手のオンライン買取業者の最高経営責任者(CEO)だが、この会社ではこうした中古製品の下取り、再販ブームを追い風に、今年の売り上げが前年比倍増、金額にして1億ドルを上回る勢いだという。

 このGazelleが実施したユーザー調査では、古いiPhoneを退蔵したままにしてあると答えた回答者が過半数を占めたという。また、この少し後に出ていたMarketWatchの記事(註4)にSellCell.comというGazelleの同業者が発表した調査の結果が出ているが、こちらには家庭のどこかに眠ったままになっている携帯電話端末の下取り価格は米国全体で推定340億ドルで、そのうちの4分の1強がiPhoneといった話も出ている。

 こちらの調査結果で目を惹くのは、使わなくなった端末を「なんとなく面倒くさくて放置してある」と答えた回答者が全体の約2割、また、下取りに出したりリサイクルに出したという回答者も2割ほどで、中には中古の端末を処分して値段が付く(お金になる)ことを知らない人も混じっていた、などとある。

 なお、こうした旧型機種の下取り強化は、Apple自身にとっても一石二鳥--iPhone 5への買い換え促進と同時に、同社が直接的にはリーチしていない中、低価格帯でのiOSユーザーシェア確保にもつながるとあって、最近ではAppleでも外部の業者を積極的に支援するようになっているらしい。先に紹介したBloomberg記事のなかには、同社がBrightstarという下取り・再販業者と協力しながら、T-Mobile USAなどでの取り組みを進めているというBrightstar幹部のコメントも出てくる。

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