仮想化技術が今、変容と進化を遂げようとしている。クラウドコンピューティングには不可欠の要素といえる仮想化分野は今後、どのような方向に向かうのか。
この領域のリーダー企業である米Citrix Systems シニアバイスプレジデント兼最高マーケティング責任者(CMO)Wes Wasson氏に聞いた。
--この1年ほどの間に仮想化技術の意義や役割はどう変わったのか
従来、仮想化技術を活用する目的は、サーバであればできるだけ小さなフットプリントで数多くの台数を稼動させ、環境を簡素化してコストを抑えることが主眼だった。しかし、仮想化の意味をもう少し広義で解釈すると、緊密に結びついているものを分離するということになる。最近では、仮想化はサーバだけでなく、アプリケーション、デスクトップ、エンドユーザーのデバイスまで視野に入っている。さらには、ソフトとハード、OSとアプリケーションも切り離され、エンドユーザーはオフィスに釘付けにされずにすむようになる。この事実は、コスト抑制ということに留まらず、より多くの利点をもたらす。
Wes Wasson氏
--仮想化のメリットも変化したのか
まず、企業のIT部門の観点からいえば、デスクトップの仮想化はセキュリティ対策を格段に楽にする。データやアプリケーションなどは、彼らの手を離れて堅固なデータセンターに格納されるからだ。次にアジリティー(敏捷性)の点だ。仮想化技術を利用すれば、激しい環境変化に俊敏に対応できるようになる。これまでの単なるサーバ仮想化は、エンドユーザーにはあまりメリットがなかったのではないか。サーバが30台から10台になったとしても、エンドユーザーに大きな変化はない。
--エンドユーザーはどのような利益を得られるか
いまやデスクトップ仮想化は、エンドユーザー側に多大な利益をもたらしている。企業で働く人々は、在宅でも移動中でも、コーヒーショップにいても仕事をすることができる。また、端末は一般的なパソコンだけでなく、iPadでもMacでも良い。生産性は大きく向上し、仕事と生活の調和をとる点でもメリットは大きい。
--仮想化技術の変化は、Citrixにどう影響するのか
サーバ仮想化は大企業でも6割程度(の導入率)だが、デスクトップ仮想化のエンドユーザーは全世界で1億人に達している。もちろん、当社にとってサーバ仮想化は重要だが、サーバの数よりエンドユーザー向けデバイスの方がずっと数が多いのだから、デスクトップ仮想化の領域は非常に期待できる。市場規模はいっそう拡大させることが可能だろう。