ローソン、クラウドでロックイン回避へ--大企業がAWSを利用するホントの理由

齋藤公二 (インサイト)

2014-07-26 08:00

 イベント「AWS Summit Tokyo 2014」(7月17~18日開催)の2日目の基調講演には、アマゾン データ サービス ジャパン代表取締役社長の長崎忠雄氏が登壇。初日のWerner Vogels氏と同様、長崎氏がホストとなり、IaaS/PaaS「Amazon Web Services(AWS)」のユーザー企業とともに、AWSの特徴や利用法を解説していった。ゲストスピーカーとしては、ガリバーインターナショナル経営戦略室 執行役員の許哲氏、積水化学工業の情報システムグループ長の寺嶋一郎氏、ローソン 専務執行役員 加茂正治氏が登壇した。

AWSの採用を決めた5つの理由

 「サービス開始から8周年を迎え、190カ国数十万社に利用されるまでになった。国内ユーザーは2万社以上。数多くのCIO(最高情報責任者)と話をさせていただいているが、この1年で会話の質が変わってきた」

 長崎氏は、国内でのAWSのビジネス状況についてそう切り出した。会話の質の変化には、いくつかの背景がある。長崎氏はそれを「なぜAWSを採用するのか」というユーザー企業から寄せられる声を5つに整理した。

 1つめは、アジリティだ。AWSを採用して、ビジネスを俊敏に柔軟に展開していきたいというユーザー企業がこの1年で非常に増えたのだという。

長崎忠雄氏
アマゾン データ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏

 「DropboxやAirbnbなど初期からのAWSユーザーと同じ流れがエンタープライズにも来ている。エンタープライズのこれまでの常識はオンプレミスで2~3カ月かけて機器を調達することだった。それが今はクラウドを使って数分で調達できるようになった。トライアル&エラーをできるだけ速く回し、失敗のコストを下げて成功の確率を高める。そして、アイデアを即座にビジネスの形にしていく。そうしないと競争に勝てないのではないかという考え方が広まってきた」(同氏)

 2つめは、プラットフォームの深化だ。現在AWSは10リージョン、26アベイラビリティゾーン、52エッジロケーションで展開する。サービスは、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワークなどのIaaSに相当するものから、分析、運用管理、モバイル、エンタープライズアプリケーション、DevOpsなどのPaaSやアプリケーションに相当するものまで多岐にわたっている。

 プロフェッショナルサービスやトレーニングサービスも拡充され、AWSトレーニングと認定試験は、2013年の計3つから、7トレーニング、4認定試験の計11に拡大した。「企業は、世界にひろがるサービスをビルディングブロックとして組み合わせ、タイムトゥマーケットを早めている」(同氏)

 3つめは継続的な改善とイノベーションだ。クラウドはユーザー企業自身が機能を開発するわけではない。このため「顧客に代わって機能を追加することを使命」(同氏)と考えて取り組んでいる。2013年は280の新機能とサービスを提供したが、2014年はすでに160を超える新機能とサービスを追加。「オンプレミスでは購入して4~5年で減価償却するため、途中で機能を追加しようと思っても難しい。一方、AWSは機能が継続的に改善され、しかも無償で提供される」(同氏)ことが大きなメリットになるという。

 長崎氏はまた、「非常に要望の高かった機能の1つがまもなく提供されるようになる」とし、これまで英語でしか提供されていなかったマネジメントコンソールが日本語化されることを明かした。実際、テクニカルエバンジェリストの堀内康弘氏が、仮想マシンサービス「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」の日本語化されたダッシュボードを使って、インスタンスを起動したり、EC2での固定IPサービス「Elastic IP」でサーバのグローバルIPを固定したりといったことを実演してみせた。

 4つめは、低価格で柔軟な料金体系であること。オンデマンド型の課金のほか、一定期間の使用のコミットで安くなるリザーブド、時価で入札するように使うスポットがあるほか、利用量に応じた割引も行っている。2006年から44回値下げしてきたことも大きな特徴だ。

 「AWSの価格に対する考え方は、料金の値下げで利用者を増やし、規模の経済でインフラコストを低下させ、それを値下げにつなげるというサイクルを回すこと。これは決して簡単なことではない。いろいろなものを重ねあわせることで実現している」(同氏)

 5つめは、コミュニティやパートナーとのエコシステム。ユーザーグルーブは全国45支部にひろがってる。2013年には40企業以上のCIOや情報システム部門長が参加する「Enterprise JAWS-UG(E-JAWS)」も発足。この4月には、パートナーが協力して、エンタープライズ向けのAWS導入ガイドも発刊した。

 こうした理由を背景としてAWSに移行したユーザーは、具体的にどのようなシナリオでAWSを活用しているのか。長崎氏はそのシナリオについて、代表的な事例とともに以下の6つを紹介した。

  • 開発・検証環境=東京証券取引所、日清食品グループ、HGST
  • 新規アプリケーションサービスの提供基盤=良品計画、コーセー、日本経済新聞社
  • 既存アプリケーションをクラウドで補強=セゾン自動車火災保険、ゴルフダイジェスト・オンライン、アンデルセン グループ
  • 既存インフラをクラウドで補強=ディップ、マネックスグループ、ソニー銀行
  • 既存アプリケーションの移行=信州大学、ノエビアホールディングス、HOYA
  • クラウドへの全面移行=丸紅、日本通運、ローソン

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