デスマーチはデスマッチになりやすい――。SI業界でよく言われることだ。しかし、そのデスマーチを撲滅するための即効薬は、いまだ存在しない。そうしたなかで、デスマーチを撲滅するための「小さな一歩だが、大きな飛躍」と関係者から期待されている文書類が公開された。
NTTデータなど大手SI事業者6社が2006年4月から共同で立ち上げた「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」(発注者ビュー検討会)の第1弾の成果物がこのほどウェブで公開されたのである。同検討会には、NTTデータのほか、富士通、NEC、日立製作所、構造計画研究所、東芝ソリューションの計6社が参加している。
発注者ビュー検討会は、情報システムの仕様について、ユーザー企業にわかりやすい記述方法と合意方法を共同検討することを目的としている。対象とする工程は、要件定義後の外部設計の段階。この段階では、発注者であるユーザー企業と受注者であるSI事業者との間で意識のズレが生じたり、発注者と受注者で互いの意図とは異なる理解をしているという事態が起きやすい。検討会では、こうした事態を防止するためのガイドラインとなる。
このガイドラインでは、設計書や関連する資料の表現や確認方法、レビューの方法を“コツ”として集約し、外部設計工程における生産物の単位に整理、具体的には「画面」「データモデル」「システム振る舞い」の3つに分けられている。今回、公開された成果物は、画面に関する「発注者ビューガイドライン(画面編)」と、関連する用語集になる。
今後発表されることになるデータモデル、システム振る舞いも含めた発注者ビューガイドラインは、SI事業者のSEとユーザー企業の情報システム部門や業務部門を読者としている。検討会の中心になるNTTデータでは、これらのガイドラインを利用することで、「ユーザー企業にもわかりやすい外部設計書を作成できることで、発注者も開発者も目標とするシステム像を共有し、発注者の思い描くシステムが実現される」と期待している。