日本ヒューレット・パッカード(HP)と富士通は6月15日、ブレードサーバの新製品をそれぞれ発表した。HPは「HP BladeSystem c-Class」を8月上旬より、富士通は「PRIMERGY BX620 S3」を7月下旬より出荷する。
HPは、今回発表したブレード製品を第3世代のブレードと位置づけている。日本HP 取締役副社長の石積尚幸氏によると、第1世代のブレードサーバは単純に高密度サーバという役割だったのが、第2世代でサーバを集約する役目を担い、第3世代では「サーバのみならずストレージやネットワークも含めたシステム全体を集約することが可能になった」と説明する。
システム統合を可能とした技術のひとつが、「HP バーチャルコネクトテクノロジ」だ。この技術は、I/Oポートの仮想化により、ブレードサーバの移動や増設時にネットワーク側のMACアドレスなどを変更する必要がなくなるというものだ。これにより、ネットワーク管理者の手まで煩わせていたサーバのシステム変更がサーバ管理者だけで実行でき、約30秒程度で完了するという。
「サーバは、ハードそのものより運用管理にコストがかかる。その負担をできるだけ軽減させたのがc-Classだ」と、日本HP エンタープライズ ストレージ・サーバ統括本部 インダストリースタンダードサーバ製品本部 本部長の上原宏氏。同氏は、こうした技術を搭載した新世代ブレードを「Blade 3.0」と呼んだ。
また、新製品には2年かけて独自開発した冷却ファンも搭載した。現在20個の特許を出願中という新型のファンは、1台のファンで4台の1Uラックが冷却可能だ。同一冷却性能のファンと比べ「寿命は約4倍で、消費電力は66%軽減、騒音も50%カットした」(日本HP ブレードバリュープロダクトマーケティング部 山中伸吾氏)という。また、1エンクロージャ内に最大10個のファンが搭載できるため、各ゾーンごとに必要に応じて冷却できる。さらに、ブレードシステム全体の大きさは、部品の大きさよりも冷却能力によって小型化が可能なため、現行モデルの「HP BladeSystem p-Class」と比べ、新型ファンを採用したc-Classは約30%スリムになった。
一方の富士通は、ブレードサーバを中核とするハードウェア、ミドルウェア、サービスを統合したIT基盤「TRIOLE BladeServer」の一環としての新製品発表だ。「単にハードを売るのではなく、ミドルウェアやサービスなどをバーティカルに体系化し、総合的なシステムとして提供するのが富士通の役目だ」と、富士通 経営執行役 サーバシステム事業本部長の山中明氏は言う。
TRIOLE BladeServerでは、システム構築を迅速にするためのテンプレートなどが提供される。テンプレートは、ブレードサーバの導入実績に基づき、サーバ集約のためのテンプレートや高信頼システムのためのテンプレート、クライアント統合のためのテンプレートなど、8つのパターンが用意されている。
ハードウェアとしては、アップリンクで10Gビットのデータ転送が可能なスイッチをブレードに内蔵できる。10Gビット対応のスイッチブレードは「世界初」と山中氏。将来的にはI/O部分をより強化し、フル10Gビットのスイッチブレードを提供する予定だ。
ブレードサーバの市場状況は
HPの上原氏は、ブレードサーバ市場が「そろそろアーリーマジョリティに受け入れられるレベルまで到達している」と話す。2006年第2四半期(2月〜4月)現在、国内でHPの出荷するサーバ製品の中でのブレードの比率は約7.4%。この比率を欧米レベルの15%にまで引き上げることが当面のHPの目標だ。
また、x86ブレードサーバの国内におけるHPのシェアは、現在25.4%で2位。以前は国内シェア30%獲得を目標としていたHPだが、「30%はすぐに達成できそうなので、40%は獲得したい」と上原氏は言う。
一方、サーバ製品全体では国内のプレゼンスが高い富士通も、ブレード製品に限ってみると「シェアは10%に達していない」と山中氏。しかし同氏は、「客のニーズが高まっているのは感じている。今年度中は無理でも、早い段階でシェアを20%にまで持って行きたい」と述べた。