日本ネティーザは8月6日、データウェアハウス(DWH)アプライアンスの新製品「Netezza TwinFin アプライアンス」を発表した。TwinFin アプライアンスは、ペタバイト級のデータにまで対応可能な拡張性を備え、現行製品「Netezza Performance Server」(NPS)の2〜5倍の性能を実現しているという。業界標準のブレードサーバを用いたブレードサーバ型アプライアンスの最初の製品で、10月末に出荷を開始する。
DWHアプライアンスは、データベースソフトウェア、サーバ、ストレージを統合した機器。TwinFin アプライアンスは、IBMのブレードサーバ「IBM BladeCenter」と、Netezzaのデータベースアクセラレータカードを組み合わせ、「Netezza ソフトウェア」を搭載した構成となっている。
日本ネティーザ 代表取締役のDouglas Etzel氏は、「高性能、操作の容易性、低いTCOという特徴を従来の製品から引き継ぎつつ、性能はさらに向上しており、他社のDWHアプライアンス製品の100倍以上になっている」と話す。
独自仕様から標準仕様へ
Netezza TwinFin アプライアンスでは、これまでの製品と同様、データがメモリに到達する前に処理するストリーミング処理の手法を用いているとともに、プログラミング可能なLSIである「FPGA」(Field Programming Gate Array)を採用し、ディスクからデータが読み出されると同時に不要なデータを取り除くプログラムをFPGAに搭載している。そのため、I/Oボトルネックが解消されるとともに、CPU、メモリ、ネットワークなどが不要なデータを処理せずにすむ。同社のDWHアプライアンスが高い性能を保持できる鍵はここにある。
標準的なシングルラック構成の「Netezza TwinFin」は、32TBの非圧縮データをサポートし、12枚の「S-Blades」(スニペットブレード)が搭載されている。S-Bladesは、同アプライアンスのMPP(Massively Parallel Processor:超並列プロセッサエンジン)を構成する処理ノードで、それぞれがIntel マルチコアベースのCPU、Netezza独自のマルチエンジンFPGA、十数ギガバイトのRAMで構成される独立したサーバであり、各部品が並列に処理することにより、高いパフォーマンスを実現する。
基本的にこれまでのNPSは、管理などを担うフロントエンドのホストと、処理作業を受け持つ複数のSPU(Snippet Processing Unit)から構成されていた。非対称型超並列処理技術を用いており、SPUのCPUには「PowerPC」を採用していた。これは「消費電力などの問題で、IntelのCPUではなかなか実現できなかった」(Etzel氏)からだが、「最近では消費電力が低減化され、コアの数が増えている」(同)ため、IAサーバの「IBM BladeCenter」を採用した。
また、「Netezza TwinFin システム」は、データロードやクエリ実行がすぐにできる状態で出荷され、インデックスやチューニングの必要はないという。このような簡易性も、現行の製品と同じだ。
製品構成は、ラック数が1/4、「S-Blades」が3基、最大データ容量が32TBの「TwinFin-3」から、ラック数が10、「S-Blades」が120基、最大データ容量が1280TBの「TwinFin-120」まで、5種類が用意される。従来のNPSは今後、サポートは継続するが、販売は打ち切る方針だ。
国内市場を見据えた製品
日本ネティーザ 執行役員 技術本部長の法華津誠氏は、「従来のストリーミング処理、FPGA、並列処理など、製品の内部でやっていることは何も変わっていないが、プラスアルファでIT産業界の進化の成果を取り入れ、スケラービリティを確保できた」と語る。
こうした変化は国内市場での販売戦略にも関連している。これまでの製品は基本的に独自仕様だったことから、「一部にNetezzaが独自ハードであるため製品採用の検討対象にならないことがあったが、(今回は)標準製品を使った」(Etzel氏)ため、これらの層にも提案がしやすくなる。また、新製品は大容量データに対応することと、より高度な分析も可能になったため、「大量データの処理が必要な企業、SQLを超えた分析を望んでいる企業にアピールできる」(Etzel氏)ようになる。
さらに同社では「他社もさまざまなDWHアプライアンスを出しているが、机上のスペック比較だけでは製品の評価は難しい。当社では必ず実機検証をしており、顧客がシステムを選択する際のリスクを最小化できる」(法華津氏)として、実機検証の優位性を強調している。
日本ネティーザは今後、TwinFin アプライアンスに、エントリー/開発用モデルを2010年春、大量データ処理向けの大容量モデル、リアルタイム分析を可能にするメモリ強化モデルを1年以内に順次発売する予定で、「より幅広い利用シーンに対応」(Etzel氏)すべく、一層販売を拡大していく意向だ。