電通国際情報サービス(ISID)は、3月20〜21日に福島県郡山市で開催された「地酒と食の祭典 ふくしま春の陣」の会場で、テレビユー福島(TUF)が実施したエリアワンセグ実証実験に協力。テレビ放送用の電波帯域のうち使われていない「ホワイトスペース活用」を意識した実験放送を行なった。
エリアワンセグとは、テレビ放送の空きチャンネルとワンセグ技術を利用して、半径数メートルから数百メートル程度の限定されたエリアでのみ視聴可能な映像などの情報配信サービス。この実験では、ISIDのエリアワンセグシステム「ワンセグ・ボックス」を利用して、会場のビッグパレット郡山に設置したワンセグ・ボックスから1mWの出力で情報を配信し、広さ約5500平方メートルの会場内全体での視聴を実現したとしている。
ワンセグ・ボックスは、ISIDが朝日放送株式会社と共同開発したエリアワンセグシステム。小型のボックスひとつでコンテンツの制作、TSファイル化、放送波としての送出などを実現できるという。ネットワークにも対応しており、マルチキャストで配信されたワンセグコンテンツを多地点で同時に配信することも可能だとしている。
今回の実験では、ワンセグ・ボックスに新たに追加した字幕機能とAmazon Web Services(AWS)、そしてISIDのクラウド型マーケティングプラットフォーム「DMAP」との連携によるコンテンツ制作機能を実証することも目的だったとしている。
実験では、DMAPを利用して会場で試飲できる43の地酒、およそ200種類を対象に、来場者それぞれの好みに応じておすすめの銘柄、蔵元をピックアップして一覧表示する「地酒の銘柄検索サービス」を構築した。同サービスはナビゲーションツールとして会場内で利用できるほか、銘柄の評価機能も提供し、訪れた蔵元ブースの足跡帳としても活用したという。将来的には、イベント終了後のセールス活用やマーケティング分析にも応用が可能だという。
また、今回の実験ではコンテンツ制作工程においてもクラウドを利用した。ワンセグ・ボックスに内蔵されたコンテンツ制作機能をAWS上に移植し、リモートでの制作および運用環境を用意した。ネットブックのようなノートPC環境から会場内で撮影した動画をファイル転送し、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)上で映像のエンコードやデータ放送コンテンツを制作、付加。完成したファイルをAmazon Simple Storage Service(Amazon S3)経由で配信する一連のオペレーションを実現したという。
この実験によって、イベント会場に持ち込む機器として、従来では考えられないような軽装備の構成でありながら、最新の制作環境を利用し、さらにはコンテンツ配信も自在にコントロールできることを実証したという。これにより同様のイベントにおけるエリアワンセグの利活用の機会が拡大するものと期待されるとしている。