資金決済法の改正で変わるお金の流れ

飯田哲夫(電通国際情報サービス) 2010年03月09日 08時00分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 DHLのウェブサイトへ行くと、左上の一番目立つ場所が極めてシンプルな入力エリアになっている。何を入れるかと言うと、荷物の配送状況を確認するためのリファレンス番号である。これは、どこの国のサイトへ行っても同じである。

 そこからリファレンス番号を入力すれば、荷物をDHLに引き渡してから送付先に届くまで、世界のどこにあるのかが逐一判る仕組みになっている。要は荷物がチェックポイントを通過する度にシステムへ反映され、それをウェブから追いかけることができる。

 一方、お金を海外へ送金すると、その状況をウェブで確認することはできない。海外送金は物理的なお金を送るわけではないため、むしろシステム的に状況をトラックすることは容易に思われるが、実際にはそうではない。そもそも、海外送金においては、送金を依頼する銀行と送金を受ける銀行とが異なっているケースが多い。

 それは、荷物を直接家やオフィスへ届けるのと違って、お金はこちらの保有する銀行口座から相手の保有する銀行口座へ送るからである。そして、その間では、金融機関の共同出資にて運営される「SWIFT」というネットワークを通じて依頼が行われる。

 つまり、単一の金融機関にて処理が終わらないので、送金の始まりから終わりまでの全体のプロセスを押さえられないのだ。さらに、送り側も受け手側も銀行口座を持っているというのが前提となるので、口座を持てない人たちにとってみるとコストが高いうえに甚だ不便な仕組みなのである。しかし、こうした状況も資金決済法の改正で、銀行以外も送金業務に参入できることとなり、状況が変わろうとしている。

 最近、ニュースにもちょくちょく出ているので気付かれた方も多いかと思うが、SBIが設立する予定の「SBIレミット」は、MoneyGramと提携し、その代理店ネットワークを活用して国際送金に参入する。通常の銀行のサービスと異なるのは、 「手続完了後10分程度で、世界中にあるMoneyGram代理店で送金を受け取れるようになる」(CNET Japan記事からの引用)点だ。

 銀行送金であれば複数金融機関をまたがるので、どうしても送金が確認できるまで複数日かかる。それに対して、単一オペレーターが送金処理を行えば、お金の受け取りさえ確認できれば、相手方への払い出しをすぐ行えるというわけだ。物理的なモノを送っているわけではないので、これは本来実に自然なサービスなのであるが、銀行では容易に実現できない。

 セブン銀行も海外送金大手のWestern Unionと組んで同事業に参入することを発表している(PDF形式)。こちらも代理店網を活用した単一オペレーターモデルなので、送金後数分で受け取りが可能になるとしている。Western Unionの手数料体系は送金金額に応じて決められるため、小額送金を頻繁に行いたい海外からの出稼ぎ労働者には便利である。

 この点、プライシングが金額の多寡によらない銀行の海外送金とは異なるところである。ただし、セブン銀行の場合は自社のATM網も活用するので、手数料がどのような体系となるかは判らない。

 ただ、このような海外送金業務への新規参入は、即時受取などサービスレベルの向上が見込めることと、小額高頻度な送金など、従来では無視されていた顧客層をターゲットとした新しいビジネスモデルの登場を意味する。今後も、リテール分野においては規制の緩和によるサービスレベルの向上を期待したい。


筆者紹介

飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。
※この連載に関するご意見、ご感想は zblog_iida@japan.cnet.com までお寄せ下さい。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

SpecialPR

連載

CIO
教育IT“本格始動”
月刊 Windows 10移行の心・技・体
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
セキュリティインシデント対応の現場
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft Inspire
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]