総務省統計局の労働力調査によると、15歳〜39歳の若年無業者数は、2008年度で84万人にのぼっているという。若年無業者、つまり非労働力人口のうち家事も通学もしていない、いわゆる「ニート」と呼ばれる人たちだ。この数字を重く見たマイクロソフトが、若年無業者を対象としたプログラムを発表した。2010年1月より提供される「ITを活用した若者就労支援プログラム」だ。
なぜ今若者を対象とした就労支援を実施するのか。「どのような状況でも、人生最初の仕事を見つけることは難しいもの。今のように厳しい経済状況においてはなおさらで、このような就労支援プログラムで一番恩恵を受けるのが若年層だ」と、Microsoft コーポレートバイスプレジデント グローバルコーポレートアフェアーズ担当のPamela S. Passman氏は話す。
「今では政府も若年無業者の問題に目を向けており、NPOも若年層を支援しようとしている。こうした活動をマイクロソフトがより大きくできると考えている」(Passman氏)
マイクロソフトの提供する支援プログラムはグローバルで行われているが、各プログラムはそれぞれの国や地域のニーズに合わせたものだ。ただしPassman氏によると、若者を対象とした支援プログラムは海外にも存在するという。例えば、ブラジルでは若者が最初の仕事を見つけるための支援をする「First Job」と呼ばれるプログラムを、日本と同様現地の政府やNPOと協力して提供しているという。
「ブラジルでは若者の人口が非常に多い。そんな中で若者が最初の仕事を見つけるためにはITスキルが不可欠」とPassman氏。若者人口が少ない日本でさえ若者の失業率が高いことを考えると、若者の人口が多い国ではなおさらこのような支援が必要とされるのだろう。
さまざまなコミュニティが対象
マイクロソフトが支援しているのは若者だけではない。日本では、これまでに女性や障害者、在住外国人、特定の地域などを対象としたプログラムが提供されてきた。
海外でもそれぞれの地域のニーズに合ったプログラムをが提供されている。その一例としてPassman氏は、中国やマレーシアの事例を挙げた。「中国では、地方から大都市に仕事を探しに来る人口が非常に増えている。こうした状況に対応するため、北京の図書館と協力し、図書館のコンピュータ室で地方からの移住者を対象にトレーニングを提供した。また、マレーシアでは女性の就労機会が限られているため、女性が就労スキルを身につけるためのプログラムを提供した」(Passman氏)
Passman氏が特に印象強いプログラムとして挙げたのは、日本において実施された「女性のためのUPプログラム」だ。これはDV(ドメスティックバイオレンス)の被害者や経済的に困難な女性を対象に就労や自立の支援を提供したプログラムで、2006年1月から2009年3月の3年2カ月で合計7481名が参加した。プログラム参加者のうち、目標の10%を上回る約15%の女性が就業でき、成功を収めた同プログラムは2009年4月から新たにな3カ年の取り組みが始まっている。
「(DVのように)深刻な問題にアプローチできたことは非常に良かった。今回の若者就労支援プログラムでも同じように、われわれが普段接触する機会のない若年無業者に対してできるだけ支援していきたい。そのためにも、コミュニティと密なつながりを持つNPOとの協力が欠かせない。マイクロソフトでは、単に金銭的援助をするだけでなく、われわれの持つ専門知識や人を実際に動かすことで、より大きく社会貢献できると考えている」(Passman氏)